第648話 緊急招集、再び
統一歴九十九年五月七日、夕 -
昼間、リクハルドヘイムの
通常ならば
このため余計に日々の
エルネスティーネ・フォン・アルビオンニア侯爵夫人は
ルクレティア・スパルタカシア・リュウイチアは既にリュウイチの
エルネスティーネの実弟であるアロイス・キュッテルはカールの見舞いという名目で連日リュウイチの
アルトリウスの家族らはまだリュウイチの降臨について知らされていないし、ルキウスの妻アンティスティアはルキウスの看病でベッタリだ。そもそも、夫のある女が夫の同伴でもないのに他の男の
アルトリウシアにいる
降臨者は《レアル》から
というわけで、アルトリウスはルキウスが復帰するまで、あるいはアロイスが帰って来るまでの間、リュウイチの
だが、今日くらい帰ってみよう……
アルトリウスはそう考えていた。普通、貴族の
とは言っても陽はとっくに沈んでいるのだから、そんな時間から妻と息子と妹の待つ家へ帰ったとしても、家人の多くは既に寝てしまっているだろう。それでも翌朝の
愛妻コトが送ってきた花……その意味は結局わからなかったが、あれはきっと「帰って来てほしい」という意味だろう。
リクハルドから「今日ぐれぇ帰っておやんなさい」と言われたこともあって、アルトリウスはリュウイチの前を辞した後、家令のマルシスに命じて馬車を用意させた。既に陽は没したが雲の切れ目からは覗く空はまだ茜色を残していた。今から帰れば、息子や妹は寝ているだろうが、妻のコトくらいはまだ起きているうちに着けるかもしれない。
だが、今日もアルトリウスの乗った馬車は彼の家族の元へ彼を運ぶことは無かった。すぐに早馬が追いかけてきて急報を告げたのだ。
「閣下!大至急に
「お告げだと!?」
「ハッ、ネロ殿の報告によると、ブルグトアドルフにて、戦が始まったようだとのことであります。」
マニウス街道の途中で追いついた
「行先変更だ!
馬車はそのまま街道上でUターンすると、つい今しがた通り過ぎたばかりの
「
「閣下!!」
「
吹き抜けになっている二階の廊下から姿を現し、燭台を掲げた近習を伴って階段を小走りに駆け下りてきたのは
階段を駆け下りたラーウスはそのまま脚を緩めることなくアルトリウスの前まで来ると右腕を掲げて敬礼する。
「閣下、お戻りで!」
「また戦だと聞いたぞ!?」
アルトリウスが答礼を返すと、ラーウスはその場で口早に説明を始めた。それによるとアルトリウスがリュウイチの前を辞してしばらく後、日没の少し前あたりにリュウイチがルクレティアに付けた《
「既にみんな集まっているのか?」
「ハッ、
私とルッススは来たばかりで……」
ラーウスは来ている幕僚の名を挙げたが、名前が挙げられなかったテルティウス・ウルピウス・ウェントゥスはサウマンディウムへ出張中だし、セプティミウス・アヴァロニウス・レピドゥスはアルビオンニウムへ赴任中。アシナ・バエビウス・カエピオはアルトリウシアにはいるが、トゥーレスタッドに建設を予定している砲台についての打ち合わせで
要するに
「わかった。すぐに行けるのか?」
「ハッ。
資料集めの方はまだ少しかかりそうですが、我々だけでよろしければ……」
「よし、資料はひとまず今ある分だけでいい。
どうせ詳細の検討は事が済んだ後の作業だ。
今は状況を記録するのに必要な分だけあれば足りるだろう。」
かくして、彼らはリュウイチの待つ
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