第408話 薄暮の不期遭遇
統一歴九十九年五月五日、夕 - アルビオンニウム市街地/アルビオンニウム
それというのも彼ピクトル自身は
彼が
彼の貧乏性に起因する何事も無駄を好まず必要最小限で早くする傾向は、工兵としての彼の評価を大きくする要因となっていた。他の者ならば必要は無くともマニュアルに従ってしっかりやる部分を、彼は自分で無駄だと判断した部分は容易に簡素化してしまうのだ。結果、彼が指揮する工事では他の者が指揮する場合に比べ消費する資材が少なく、時間も早く、兵の消耗も少なくなった。それでいて工学的な原理などはちゃんと理解した上でそれをやっているので、手抜工事にありがちな不具合もあまり出さなかたった。
結果をちゃんと出したうえでそれなので、
ただ、今はそれが悪い方へ出てもいた。彼の部下の
「ングッ…んっ!?ブフッ!!…ゲホッゲホッ!!」
馬上で口に含んだ
やはり馬に乗って隣を進んでいた
「だから言わんこっちゃない!
「ゲホゲホッ…んぐっ…ふぅ~~
そうも言ってられんのだ、エウクレス!
今度の敵はいつ、どう行動するか分からん!
防衛体制は急いで完成せねばならんのだ!!
それに…」
ピクトルは自分を
「それに…何です!?」
「この
まだ温かい!冷めない内に食べないと不味くなる!」
それを聞いて
だからピクトルはあえてパンが出来立てだと言い訳をしてみせた。ピクトル自身はパンなんか温かかろうが冷たかろうが気にする人間ではない。ただ、育ちの良い
ピクトルがこうまでして急いでいる理由は、別に彼の性分だけではなかった。
あの軍議の後、ピクトルたちは再度ルクレティアと会い、《
それによれば敵は確実に
問題なのは『
ハーフエルフを含む
そんな強力な相手だが、しかしこちらが全力で攻撃して良い相手でもなかった。
だが、そんな彼らの存在を今現在、ピクトルは部下たちに打ち明けるのを禁じられていた。実は彼の部隊、
…
《
そこで、
代わりにセルウィウス・カウデクス率いる
ともかく、ピクトルは自分の
また、彼らは急ぎ過ぎていたため松明などを用意してなかった。到着前に完全に暗くなってしまわれると、道が分からなくなって到着が遅れてしまうかもしれない。
「
廃墟の中を急ぐ彼らの先頭を進む
「何だ、賊か!?」
既に日は稜線に没しており、見上げる空はまだ赤々と燃える様に明るいにもかかわらず地表付近…特に廃墟の街並みは夕闇に支配された世界となっている。暗がりで見えにくいが、馬上のピクトルからは人影が何やら道路を横断するようにロープを張っている様子が伺えた。
「エウクレス!」
「ハッ!
ピクトルが声をかけると
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