アルビオンニウムの戦い
第406話 緊急合同軍議
統一歴九十九年五月五日、夕 -
《
その前に急いで身を清め、サイズの合わない借り物の神官服を着たイェルナクが駆け付け、「何で兵隊が入っているのですか!?
「控えなさいイェルナク!
その三人は降臨者様の奴隷、
降臨者様が
その身に付けている物はいずれも降臨者様から賜った聖遺物です。
彼らを不当に蔑むことなど、許されることではありませんよ!?」
不当だ、自分も中へ入れろ、何で一兵卒が入れて私が入れないんだ!?と喚き散らすイェルナクに対し、ルクレティアがそう一喝するとイェルナクも
ルクレティアやスカエウァらは祭祀の準備と、祭祀に備えての食事のためにその場を後にし、軍人たちは緊急の軍議に、そしてイェルナクはスカエウァに案内役として付けられた神官見習いを引き連れて『
「それで、緊急で軍議をとのことだがどういうことですかな?
我々は新たな
カエソー・ウァレリウス・サウマンディウス伯爵公子は冗談めかした言いようではあったが、セプティミウスの表情や態度、彼らが引き連れていた
出席者はアルビオンニア側はセプティミウスの他、護衛隊長のセルウィウス・カウデクスと
サウマンディア側の一同を見回したセプティミウスは緊張感と落ち着きをバランスよく保った態度で口を開く。
「無粋は承知の上でお話しせねばならぬ緊急の案件が生じました。
実はこれからこの地で戦が起こるやもしれないのです。」
セプティミウスのこの発言にサウマンディア側は特に反応を示さなかった。わずかに眉をあげて驚いた風は見せたが、その表情には「やっぱりな」というような感想が滲んでおり、むしろセプティミウスの話の続きを促すかのように無言を貫いている。
「“敵”の規模はおよそ三百と見積もられております。
これより南の地を治めるシュバルツゼーブルグ卿の報告によれば、先月あたりから北ライムント地方一帯の盗賊たちを傘下に納めた新勢力が台頭しており、それが我々に対し攻撃を仕掛けようとしておるようなのです。」
「ということは、貴軍が連れて来たあの難民どもは?」
三百人もの盗賊など俄かには信じがたい話ではあるが、セプティミウスの様子からは嘘とも思えない。マルクスはまさかとでも言いたげな表情でセプティミウスに問いかける。
「こことシュバルツゼーブルグの中間にある集落、ブルグトアドルフの住民です。
ブルグトアドルフは人口二百に満たぬ小さな集落ですが、昨夜“敵”の襲撃を受けて住民の約三分の一を殺され、半数が負傷するという被害に遭いました。
彼らはシュバルツゼーブルグへ避難する途中です。」
セプティミウスの説明はある程度マルクスの予想に沿った話ではあった。てっきり難民をサウマンディウムへ送りたいと言い出すのではないかとマルクスは懸念していたが、それは外れたようだった。サウマンディウムで引き取れなどと言われずに済んだことには安心しつつも、しかしシュバルツゼーブルグへ避難させるとなると別の疑問が湧いてくる。
「ブルグトアドルフからシュバルツゼーブルグへ向かうなら、方向が逆ではありませんか!?」
「ブルグトアドルフからシュバルツゼーブルグへの道中は、既に安全ではありません。“敵”は街道上の
ゆえに、彼らは遠回りになりますがアルビオンニウム経由でシュバルツゼーブルグへ避難するつもりなのです。我々がアルビオンニウムから帰還するのに合わせてね。」
「奪われた武器は!?
まさか、盗賊三百人全員が
ピクトルの質問にセプティミウスは頭を振った。
「襲われた
駐屯していた
しかし、ブルグトアドルフで
「
百四十発もの
「“敵”の中に銃を扱える者がいるようです。
昨夕、“敵”の発砲訓練と
ですが、それらはまだ
セプティミウスのもったいぶった物言いにカエソーは身を乗り出した。
「まだ、何かあるのかね?」
「はい、“敵”を率いている連中こそが最大の問題です。」
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