第405話 マグナ・クリスタルム・ピラ復活
統一歴九十九年五月五日、夕 -
「今後も、祭祀を行い地脈を見続けねばなりませんね。」
地脈の現状、そしてその影響について《
「《
現状では神官たちは誰も地脈を観測することが出来ない。だが、この地の地底には今も地脈が残っており、その魔力がほぼ枯渇した結果いくつかこの地域に影響が出ることが予想される。それを知るのが
『自分では見れんのか?
そなたからは地の属性に近い魔力を感じるが…』
「残念ながら私では地脈が弱すぎて見えません。
かつてあった
不可解そうに尋ねる《
『水晶の玉があれば見れるのか?
そこにもあるだろう?』
《
「残念ながらあれでは小さすぎてダメでした。
あれはあれで大きいのですが、地脈が弱くなりすぎてあれでは足らないのです。」
仮にプルケル家の水晶球で地脈を観測できたとしても、今後も借りることが出来るわけではなかった。アレはサウマンディアの
「あの壺に入っている砂がかつて一つの大きな水晶球でした。
ですが、ああなってしまったので…」
ルクレティアは砂の入っている壺の方に目をやり、残念そうに言った。ルクレティアにとって
それが今や見る影もない、ただの白い砂と化しているのである。氏族の宝、子供のころからの思い出、まるで神官としてのアイデンティティそのものが揺らいでしまったかのような喪失感を、今ルクレティアは味わっていた。
『ふむ…』
そんなルクレティアの様子と砂の入った壺を何度か見比べた《
「「「!?」」」
《
「何だ!?何が起こっている!?」
「砂が…!?」
「これは一体…」
「な、《
『
「まさか!?」
「
「おお、奇跡だ」
「この目で見れるとは…」
通常の方法で鉱物や金属を加工しようとすると、素材に不純物が混ざったりするし、また《
それが、おそらく百年以上ぶりに目の前で再現されている。それを目の当たりにする者たちはただ茫然と見守るばかりであり、一部には感激のあまり涙を流している神官もいた。
砂粒は丸い形にまとまっていく中で一粒一粒が液化して赤熱したように弱い赤らんだ光を放ち、それが他の粒と合わさって一つの球体を形成し始める。鉱物が溶けて液化しているとすれば相当な高温のはずだが、不思議と周囲で見守る者たちがその灼熱を感じることは無かった。ほのかな温かさを感じるのみである。
気付けば頭上を漂っていた砂の雲は一つの球体に変化していた。空中に浮かび回転運動を続ける球体は発していた赤らんだ光をゆっくりと弱めていき、液体は冷めて結晶化していく。そして姿を現したのは《
「ア、《
それをこちらの鎖の網に乗せてください!!」
《
キシッ…ギシギシッキシッ…
「「「「「お、おおおおお~~~っ」」」」」
鎖のきしむ音を響かせ、巨大な水晶球が壁や天井から伸びた鎖によって編まれた網に納まると、それを見届けた人々からどよめきにも似た歓声が一斉にあがる。アルビオンニウム
「すごい、どうやって創られたのか謎だったが…
こうやって創られたものだったのか」
それまで口をポカンと開けたまま見ていたスカエウァが呻くように言った。
スパルタカシウス氏族には大小さまざまな水晶球が伝えられているが、いずれも由来が不明瞭な物ばかりで、その製法は全く分かってなかった。ただ、《
しかし、子孫が増えてくると水晶球も新たに入手する必要が出てくる。なのに天然石を削って作っても必ず不純物やヒビのような模様があったし、スパルタカシウス氏族に伝わるような混じりけの一つも無い水晶球はどうやっても再現できなかった。おそらく魔法か
『では、試してみるがよい。』
「は、はい!」
ルクレティアは早速、新しくなった
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