第402話 スカエウァ・スパルタカシウス・プルケル
統一歴九十九年五月五日、夕 -
結局ルクレティアもイェルナクの泣き落としに勝てず、一般人の立ち入りがギリギリ許されている『
ようやく静かになったところでルクレティアは出迎えに並んだ者たちの中から若い神官の姿を見出した。今回、サウマンディア側から送り込まれた調査隊を束ねる神官スカエウァ・スパルタカシウス・プルケル…ルクレティアの従兄であり、婚約者だった男だ。
レーマ帝国は男尊女卑社会であり、恋愛結婚などというものはほぼ無い。
ルクレティアの場合は降臨者の血を引く
スパルタカシウス家は本来レーマでもっとも格式のある血統であり、その直系たるルクレティアならば結婚相手など引く手あまたであるはずなのだが、ルクレティアの曽祖父の代で政争に敗れレーマを追われたせいか、帝国内の他の
スパルタカシウス氏族は血統が古すぎて
スパルタカシウス氏族宗家として一家の力を取り戻すためには魔力の優れた血を引き入れるしかないのだが、魔力に優れた
「ご無沙汰しております、ルクレティア様。
祭祀の準備は万端に整え、お越しをお待ちしておりました。」
「こちらこそ、御無沙汰しております
まさかサウマンディアから調査に来ていた
「身に余る御言葉。
本日、伺ったばかりで祝いの品も御用意できておりませんが、プルケルに成り代わりお祝い申し上げます。」
「お祝いの御言葉、ありがとうございます。
まだ公にできませんが、
プルケル家からもこれまでと変わらぬご支援ご助力を賜りたくお願い申し上げます。」
「プルケル家はルクレティア様と同じスパルタカシウス氏族です。
助力は惜しまぬことでしょう。また家はもちろんの事、私個人といたしましても、微力を尽くす所存にございます。」
スカエウァはルクレティウスの姉の三男であり、ルクレティアより二つ年上の新米神官であった。サウマンディア生まれサウマンディア育ちではあったが、アルビオンニアとサウマンディアの
その時の感触からは、スカエウァ自身はルクレティアの事を憎からず思っていた筈であったが、スカエウァの態度からは今の彼の心情がどういうものであろうか想像できず、ルクレティアはスカエウァの形式ばった態度に戸惑いを禁じ得ない。型どおりの挨拶が一通り済むと、何をどう話していいか分からなくなってしまう。が、会話が止まって空気が気まずくなる前にスカエウァは事務的に話を進め始めた。
「では、早速『
「そ、そうですね。よろしくお願いします。
クロエリア、荷物を頼みます。」
「他の皆様もどうぞ中へ」
ルクレティアが侍女のクロエリアに後事を託すと、スカエウァは周囲の軍人らも誘って
「お前らも来い」
セプティミウスにそう言われ、リウィウスたちも後に続いた。
スカエウァは
「ね、ねえスカエウァ、ひょっとして怒ってる?」
「いや、怒ってないよ?
驚いてはいるけどね。
それどころじゃないんだ。」
心配そうなルクレティアにスカエウァは前を向いたまま歩調も緩めずに歩き続ける。
「『
本当なの?」
「それは本当…砂になってた。」
「砂!?…じゃ、じゃあ祭祀の準備ってどうしたの!?」
大地の底深くには巨大な魔力の流れがあり、
満月の夜と新月の夜は《
このような地脈を観測する儀式を
ただ、代を重ね過ぎたとこで魔力も《
水晶球は
アルビオンニウムの
「ここにあった
だけどルクレティア、この
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