第393話 鹵獲銃
統一歴九十九年五月五日、昼 - ライムント街道/アルビオンニウム
ルクレティアらの一行の列は時間と共に長く伸びていった。荷馬車に乗り切れず、仕方なく自らの脚で歩いていた住民たちが遅れ出したのが原因だった。列の最後尾には騎乗する
護衛隊長を務めるセルウィウス・カウデクスは、住民たちを守ることは出来ないと明言していたにもかかわらず、彼らに気を使って割と頻繁に、そして少し長めの小休止をとるようにしていたが、そうした配慮も住民たちにとって十分とは言えなかった。
今朝の出発前にシュテファン・ツヴァイクの放った早馬によって事態を知らされていた
「大休~止!」
軍隊が行軍する際にとる途中休憩には
大休止は半時間から一時間くらいの比較的長い休憩で、食事を摂ったり仮眠をとったりするものだ。より一般的な表現を用いるなら「昼休み」と言い換えることが出来るだろう。
一般にレーマ人は昼食を摂らないか、摂ってもクッキーのような固焼きパンを数個かじる程度の軽食しか摂らないが、昨夜は徹夜で戦闘やら墓穴掘りやらでかなり疲労を貯めていたこともあって、セルウィウスは
周囲に配置された
「おい!ヨウィアヌス!カルス!」
御者台から御者が休憩のために降りた後、リウィウスは後ろを振り返って声をかける。
「なんだ、
「ちょっと、付き合え!」
リウィウスはそう言うと御者台からヒョイと飛び降り、路外へ街道の
「あ、おい!どこへ行く!?」
「へぃ、チョイと用足しでさ。」
「あんまり遠くへ行くなよ!?」
先月まで同僚だった
「なんだよ
わざわざ呼び出すってこたぁ、ただの小便じゃあるめぇ?」
「おう、ちょっと待て」
リウィウスは用心深く周囲の様子を探った。街道からはすっかり離れたし、先ほど声をかけてきた立哨ももうこっちを見ていない。多少大きい声で話をしてもこの距離なら聞こえることは無いだろう。
「大丈夫だ、ここなら誰にも聞かれないぜ?」
ヨウィアヌスは自分も周囲を見回しつつニヤニヤしながら言った。
リウィウスがヨウィアヌスをこうやって人目のつかないところへ呼び出すとき、説教をする時か何か得する話をする時かのどちらかだ。そして、説教するなら呼び出すのは一人だけ…ところが今はカルスと一緒に呼び出された。ということは、何か得する話を持ってきたに違いない。
「なに、大した話じゃねぇよ。
お前ら、コレ持っとけ。」
そう言いながらリウィウスは腰のマジックポーチの蓋を開け、中から
「今朝、賊共が森の中に落として行ったのを拾ったモンだ。
三丁拾ったからお前らに一丁ずつやる。」
ヨウィアヌスとカルスはそれを見るとそれまでの笑顔を消し、互いに顔を見合わせてニッと笑った。
「何だ、要らねぇのか?
弾も八発ずつだがあるぞ?」
リウィウスが受け取ろうとしない二人の様子を以外に思っていると、二人とも自分のポーチを開けて
「へっへ、俺らも拾ったんだよ。」
「
「
「オレらぁ殺された
みんな賊が持ってったと思ってっから怪しまれねぇよ。」
そう言いながらカルスとヨウィアヌスは自慢げに
「呆れた奴らだ…じゃあ、
「もちろんあるぜ!
彼らが手にした
だから発砲可能な状態を維持するためには、定期的に
ましてリウィウスが拾ったのは銃の扱い方もろくに知らない盗賊が手にしていた物であり、調整が不完全で本当に発砲できるかどうか少々不安の残る代物だったから、ここで予備部品が手に入るのは心強い。
「そいつぁありがてぇや、
「いいぜ、
「
そりゃ貰えるなら貰っとこうじゃねぇか」
アンローダー【Unloader】またはブレット・プーラー【Bullet Puller】は日本語で
《レアル》世界では
撃てるかどうかわからない銃を使う上で、
「いいぜ、これは一個でいいな?
ほら、とっときなよ」
「おぅ、ありがとよ」
リウィウスは銃をポーチに仕舞うと、ヨウィアヌスから予備の
「だけど
「さあな、だが“敵”はどうやら
最低一丁は、いつでも撃てるようにしといた方が良いぜ。」
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