第385話 新たな不安要素
統一歴九十九年五月五日、未明 - ブルグトアドルフ
「ルクレティア様!どういうことですか!?」
ルクレティアたちの控える
何について訊いているかはおおよそ見当は付いている。ルクレティアは最初は素直に謝るつもりだったが、セプティミウスの言いようがあまりのも頭ごなしだったため少し機嫌を損ねてしまった。
ルクレティアはあえて椅子に座ったまま胸を張って凛と声を張る。身分はルクレティアの方が上なのだ。それも圧倒的に。自分に落ち度が無いとは言わないが、年長者とはいえ
「何のことでしょうか、
「何のことかではありません!
《
ルクレティアに詰め寄ろうとしたセプティミウスにクロエリアが立ちはだかる。
「お控えください、
こちらにおわすはルクレティア・スパルタカシア・リュウイチア様ですよ!?」
「むっ!?」
セプティミウスはクロエリアと束の間睨みあったが、周囲の目もあって己の軽率を恥じると咳払いを一つして態度を改めた。
「これは、失礼した。
何分、役目ゆえのこと、どうか許されよ。」
クロエリアはルクレティアを振り返り、ルクレティアが無言のまま頷くのを確認するとセプティミウスの前から引き下がった。
「その話は半分は本当、半分は違います。」
「どういうことか、話を聞かせていただけますかな!?」
「もちろんです。その件につきましては私も
ルクレティアは自分の目の前のテーブルの脇に置かれた空いている椅子を
「まず、《
「すると、《
「そうです。
その、私も今しがた知ったのですけど、この指輪の《
ルクレティアは手をテーブルの上に置き、右手の薬指に嵌った
「どういうことです?
《
セプティミウスは怪訝な表情を浮かべた。
ルクレティアは首を振ってからセプティミウスの方を見た。
「この
特定の《
「では、その《
「はい、先ほども申しましたように、リュウイチ様の《
リュウイチ様より、この指輪を仮の
ですから、私の願いを聞いてくださいますが、私に従っているわけではなかったのです。」
この事実を《
「つまり、ルクレティア様はお命じにならなくとも、《
ルクレティアの物悲し気な表情からウソをついているわけではないこと、そしてルクレティア本人も残念に思っていることを察しながらも、確認のためにあえて問いかけるセプティミウスに、ルクレティアは無言のまま頷いた。
「ふぅ~む」
セプティミウスはため息をついて天井を仰いだ。まさかこんなところに思わぬ不確定要素があったとは…。ルクレティアの説明が真実なら…もちろん真実だろうが…《
セプティミウスは天井を見上げたまま額を揉み、フンッと鼻を鳴らして気持ちを切り替えると改めてルクレティアの方を見た。
「わかりました。まあ、その…それは、もうどうしようもありません。
ですが、その、動くのであればなるべく事前にお話しいただきたいものですな。我々にも都合がありますし、一応ルクレティア様の身辺を御守りするという任務は我々も等しくするものです。ご協力いただけるのならそれに越したことはありません。」
「分かっております。
そのことは、私の方からも《
セプティミウスはクロエリアが差し出した
「では、裏手の敵をどう追い払ったのか、どういう敵だったのかお教えいただけますかな?」
「はい」
ルクレティアはそう言うと椅子から立ち上がり、テーブルに広げられていた地図を指で指示して説明を始めた。
「《
「沼!?」
あまりにも突拍子もない話にセプティミウスは目を丸くした。
「はい、そして低位のモンスターを召喚して放っておいたのだとか…」
「低位のモンスターを!?」
「ええ、今回直接敵と対したのは
「そんなものを…」
そのためルクレティアが口にしたモンスターの内、
「それで、賊に当たったモンスターたちはだいたい
そりゃそうだろうな…セプティミウスは呆れ顔でため息をついた。
「それで、それでもあきらめずにここへ乗り込もうとしたらしくて…」
「モンスターを退けたというのなら、当然でしょうな。」
スライムや
セプティミウスが気分を落ち着かせるために香茶を啜ると、ルクレティアは言いづらそうに続ける。
「それで、最後は魔法で追い払ったそうです。」
「魔法で!?」
思わず手に取った
だが、魔法となると話は変わってくる。もし賊が魔法を目の当たりにし、それをどこかで吹聴されでもしたら、思わぬところからリュウイチの降臨はルクレティアが
「はい、その、
「む、むぅ…」
どうやら、魔法を使うとしてもなるべく目立たないように配慮をしてもらえているということなのだろうか?少なくとも、魔法の使い手がここにいると知られてしまう危険性は心配するほどはなさそうだ。
「そ、それでは、その《
「人数は、どうやら十人もいなかったようです。ヒトと、あとハーフエルフが混ざっていたとか…」
「ハーフエルフ!?」
セプティミウスは目を剥いて驚き、思わず立ち上がった。
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