第381話 ブルグトアドルフの惨劇
統一歴九十九年五月五日、未明 - ブルグトアドルフ/アルビオンニウム
セルウィウス・カウデクス率いる
中央広場周辺より南側の住居はすべてセルウィウスが直卒していた
「パーンサ!信号弾を上げろ!
緑色だ!深追いをさせるな。
プロペルティウス!二個
さっきの笛が何の合図かわからん!まだ罠があるかもしれんから油断するな!!
ストリウス!
負傷者多数につき救援を請うと伝えろ!急げよ!?」
住民たちが集められていた広場周辺の安全を確認し終え、街中での戦闘が落ち着くとセルウィウスは
自身は手近に落ちていた誰かの
部下たちが負傷者たちの手当てを行っている中、彼は何もせずそれを見ている。別に怠けているわけではない。彼の仕事は全体の状況を把握して指揮することであって、一兵卒と共に働くことではないのだ。指揮官が自ら動くことを理想的と思う者は少なくないが、それによって部隊長が指揮能力を減じるようでは話にならない。
怪我をして呻いている住民たちの中には、そのように何もせずに突っ立っているセルウィウスの姿を恨めしそうに見る者もあったが、それを意に介してはいられない。ここはまだ戦場なのだ。指揮官が指揮能力を維持しなければ部隊の統率は維持できず、統率を失った軍隊はただの暴徒と変わらなくなる。勝ち戦だろうが負け戦だろうが、統率の維持こそ指揮官が最も優先しなければならないことなのだ。
そのうち
炎の緑色は火薬に混ぜた銅の粉末が燃える色である。レーマ軍では「攻撃中止」あるいは「安全確保」を意味していた。これを見た
「
部下の一人が駆け寄ってきた。
「どうした!?」
「
報告してきた部下はどこか気まずそうな表情を浮かべ俯き加減でセルウィウスの顔を見る。その様子からどうやらまともな状態ではないらしいことを察すると「どこだ?」と一言短く尋ねる。
「こちらです」
案内されたのは広場の入口、街道と広場の間位の場所だった。
町に突入したシュテファン率いる
シュテファンは
幸いだったことは、盗賊たちが
下馬して住民救助に当たっていた
シュテファンは榴弾を浴び、あまつさえ馬から振り落とされ、近くにいた部下や落命した馬と共に一塊の肉の山となって倒れていた。そしてその中からセルウィウスの部下たちによって掘り出された。
シュテファンは何とか生きていた。首から上は血まみれで酷い有様だったが、首から下はそうでもない。ほぼ全身に
「
セルウィウスが呼びかけると、シュテファンはブフッと口から血の泡を吹き、荒い息をしながら左目を薄っすらと開けてセルウィウスの顔を見た。
「ぅ、ぅぅぅぅ……」
一瞬、何かしゃべろうとしたが苦痛に顔を歪め再び目を閉じてしまう。どうやら背骨か肋骨を傷めているようで、苦痛で喋れないらしい。
「しゃべらないで!
どうかお気を確かに…盗賊どもは私の部下が既に追い払っております。
どうかご安心を。
今、本隊に救援を要請しました。間もなく助けが来ます。
住民たちも
セルウィウスがそう言うと、シュテファンは苦しそうに再び左目を開けてセルウィウスを見た。この時、セルウィウスはシュテファンの右目に
遠くで散発的に鳴っていた銃声は止み、セルウィウスの部下たちが続々と戻ってくる。セルウィウスは町の防備のため、四個の
シュテファンは幸運にも助かったが、こうしている間にも一人、また一人と死者の数は増えていく。その中には
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