第373話 夜襲
統一歴九十九年五月四日、深夜 - ライムント街道第三中継基地/アルビオンニウム
『起きよ、
「ハッ!?」
ルクレティアは唐突に目を覚ました。夢の中に《
「な、何でしょうか《
やや遅ればせながら自分が夜中に起こされたらしいことに気付いたルクレティアは目をしばたたかせ、ノソノソと頭を起こしながら《
『
「戦!?」
ルクレティアはその一言にガバッと跳ね起きた。
『ここの周りを敵が囲んでおる。
さきほど兵がまとまって出て行った。
着替えて
「誰か!誰かいる!?」
扉を開けるとすぐ外に不寝番の侍女が椅子に座っており、突然出てきたルクレティアに驚いた様子で立ち上がるとお辞儀した。
「ド、
「外の様子はどうなっていますか?」
「はい、近くの集落が賊に襲われたそうで、
ですが、ここは安全との事、
侍女は
「賊ですって?
近くの集落を襲った以外の敵は?」
「申し訳ありません、そのような話は伺っておりません。」
どうやら例の賊は近くにある集落を襲い、兵が差し向けられてはいるが、集落を襲っている以外の敵の存在については確認されていないようだ。だが《
「すぐに全員を起こしなさい!
戦が始まります、備えなければなりません。」
「戦ですか!?」
「そうです!《
ここは敵に囲まれていて、もうすぐ戦になると。戦支度を整えよと。
今すぐ全員を起こし、戦に備えさせるのです。」
「か、かしこまりました!」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた侍女はルクレティアの命令を受けると、弾かれたように
「
「ああクロエリア、いいところに来たわ。
《
「戦ですって!?
今、
「ここは既に敵に囲まれています。まだ姿を現していないだけなんだわ。
戦支度を整えねばなりません。着替えるから手伝って!」
ルクレティアは言いきる前に
ルクレティアたちが宿泊していた建物がにわかに騒がしくなり、寝入りばなをたたき起こされた使用人や侍女たちが右往左往し始める。あちらこちらで灯りが灯され、その様子は
「ルクレティア様か!?これは一体何事ですか!?」
さすがに気になったのかセプティミウスがルクレティアの
「クロエリア殿だったな?
これは一体何の騒ぎですかな?」
「
恐れ多いことですがルクレティア様は《
ここは既に敵に囲まれており、もうすぐ戦になるそうです。そして戦支度を整えねばならぬとのことです。」
「なんと、
クロエリアの言葉が信じられず、眉を
「クロエリア!もう服は着たわ。
婚前の貴婦人が種族が違うとはいえ男性を
「いけません
「もうっ!急ぐんだから髪型は簡単なのでいいわよ!
どうせ夜だし
「ですが
「クロエリア、早くしてっ!
あと、リウィウスさん達も早く呼んで!!
アナタ、ヴァナディーズ先生の方はどうなってるの!?
様子を見てきてちょうだい!
クロエリア、まだなの!?」
セプティミウスがわざとらしく咳ばらいを一つしてクロエリアの後に従って
「ああ、
外の状況はどうなっていますか?」
「え、オホン!
半時間ほど前ですが、ここより街道上を北へ約四百ピルム(約七百四十メートル)ほど坂を下ったところにある集落ブルグトアドルフが賊共の襲撃を受けました。今、火の手が上がっております。
ここは現在、
ですが、敵に囲まれているというのは…
「ありがとう、もういいわ」
ルクレティアは髪を結っていた侍女にそう言って下がらせると椅子から立ち上がる。
「はい、《
集落を襲ったというのは、こちらの注意を引き付けようとしているのではありませんか?」
侍女の差し出した夜目にも鮮やかな深緑に輝く
「ハッ、ですが
こちらにはまだ二百近い兵が残っております。敵は襲撃してこないか、襲撃してきたとしても返り討ちに出来るでしょう。」
元々ここには
ブルグトアドルフにはアルビオンニウム放棄後も住民が多数残っているので救助に向かわないわけにはいかない。本当は今日の
救助に向かうのは良いが敵の数が不明なうえ、既に二つの
シュテファンたちなら土地勘があるし、
「《
ルクレティアは目を閉じ、祈るように右手を顔の前で握り、その手首あたりを左手で握って支えながら唱えると、ルクレティアの右手の薬指の指輪がほのかに緑色に光り、《
「《
我らを囲む敵は、どこに、どれくらいいるのですか?」
ルクレティアが顔を上げ、目の前で空中を漂う様に浮かぶ《
『こっちに少し』
そして反対方向を指さす。
『あっちにたくさんじゃ。』
「たくさんというと、どれ位でしょう?」
『たくさんはたくさんじゃ。』
どうやら
「あの…ここの兵士より多ございますか?」
『いや、半分といったところじゃ。』
セプティミウスの話では二百人の
だが《
『あっちにはもっとたくさんじゃ。
ここを守ってる兵どもと…同じくらいか…』
そちらには今襲撃を受けているという集落ブルグトアドルフがあった。
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