ライムント街道事変
第368話 街道沿いの盗賊情報
統一歴九十九年五月四日、午前 - 黒湖城塞館・ゲストハウス/シュバルツゼーブルグ
昨夜、
しかし、小なりとはいえ爆発音や煙が出たことなどからまったく気づかれずに済んだわけではなかった。不審な侵入者があったことは事実であったこともあって、シュバルツゼーブルグ家への報告をしないわけにはいかない。
ヴァナディーズは夜風に当たろうと散歩に出かけた。そこで不審な黒い犬を見かけたのでついて行ったら、
最初はただ単に浮浪者が使われていない
「そこらの単なる賊が使うような物ではありません。」
その
毒はもちろんヴァナディーズに突き刺さった
「つまり、何者かが誰かを暗殺するために侵入していたということか?」
シュバルツゼーブルグの
敷地内で騒ぎが起こってしまったこと、そして
「おそらく…ただ、どなたを狙ったものかまではわかりません。
昨夜は要人が多数おられましたので。」
説明を終えた衛兵隊長は叱られるのを覚悟しているかのような
「賊の足取りはつかめておるのですか?」
黙ったままのヴォルデマールに代わり、やはり二日酔いで顔色の悪いセプティミウスが尋ねる。
「ハッ、
それとは別に
「いずれにせよ、ここはシュバルツゼーブルグ家の管轄であることだし、我々は旅の途中。しかも遅くとも明後日中にはアルビオンニウムに到着せねばならぬ身だ。
犯人の捜索などはお任せするほかありませんな。」
面倒を早く切り上げたいセプティミウスは距離を置く態度を示した。一応、彼とセルウィウスはルクレティアから事件の真相を聞かされており、下手に深入りするとルクレティアが
セルウィウスやルクレティアから叱責や非難の声が出ないと見るや、ヴォルデマールは失地回復すべく顔を上げて提案してきた。
「それなのですが、このようなこともあったことですし、
「「いやっ」」
これにはセプティミウスとセルウィウスの両名がそろって腰を浮かせながら拒絶の声をあげた。そして二人は互いに気付き、互いに目配せするとセプティミウスは言葉を選んで丁重に断る。
「お気持ちはありがたいが、幸い我々は三個
ここでシュバルツゼーブルグの貴重な兵力を割いて頂くわけにはまいりません。」
アルビオンニウムには既に
だが、ヴォルデマールは引き下がらなかった。
「さもありましょうが…実はここのところライムント街道には新手の賊が現れておるようでしてな。」
「新手の賊…ですか?」
「ええ、手ごわい連中です。
どうも傭兵くずれらしく装備に優れ戦慣れもしておるようで、統率のとれた動きをします。おかげで中々捕捉できませんでな。恥ずかしながら、我々の方が
目立ち始めたのはひと月前あたりからでしょうか…シュバルツゼーブルグ周辺やアルビオンニウム方面におったこれまでの盗賊どもを討ったり、傘下に納めたりして急速に勢力を伸ばしておるようで、近々
「勢力はどれほどなのです?」
「実態がまったくつかめておらんので何とも…ただ、これまでシュバルツゼーブルグ周辺にいた盗賊の動きは大きく変わっております。
影響を受けた盗賊のうち、壊滅した盗賊を除いたすべてがソイツらの傘下に入っているとしたら、三百人近い勢力にはなっておるでしょう。」
セプティミウス、セルウィウス、そしてルクレティアは耳を疑い声をあげた。
「「「三百!?」」」
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