第366話 ロック・ゴーレム
統一歴九十九年五月三日、夜 - 倉庫群/シュバルツゼーブルグ
「先生ったらこんなところに何をしに?」
リュウイチから貰った
ルクレティアは尾行などという行為に慣れていなかった。そりゃ鬼ごっこやかくれんぼといった遊びは幼いころに散々やった憶えはあるが、かといってこういう追跡ゲームのような事はやった覚えが無い。ヴァナディーズが建物の影に隠れて視界から消えてしまった時点で完全に見失ってしまうのも当然であろう。
「困ったわね…まさか一つひとつ全部当たるわけにもいかないし…」
ルクレティアは途方に暮れてしまった。
ここに並んでいる
もしかしたら、
最初は好奇心と冒険へのワクワクが勝っていたルクレティアだったが、人気のない
ここを一周して見つけられなかったら帰ろう…ルクレティアがそう思い始めたころ、ルクレティアは一つの
「あそこ…かしら?」
心細さからか口に出して誰にともなく問いかける。返事は当然無い。
ともかく、ルクレティアは半開きになった扉の方へ駆け寄った。リュウイチから貰った
「ま、待ちなさいよ!
アナタたちの事なんて言わない!言うわけないでしょ!?
言えば私もただでは済まないのよ!?」
入口近くまで近づくと、半開きになった扉の向こうから声が聞こえてきた。声からしてヴァナディーズのようで、英語で誰かと話しているみたいだが、相手の声の方は聞き取れない。
「言ってないわよ!
何でそうなるの!?」
話の内容は聞き取れないが何やら興奮しているようだ。
ひとまず声をかけて場所を移してもらった方がいいだろう。そんな気がする。
「い、行った方がいい…ですよね?
なんか、変な雰囲気だし?」
ルクレティアは肩に乗った《
『守るのか?』
いつも口数が少なく、返事をしてくれないことも珍しくない《
守る?ヴァナディーズ先生の事よね?
「え!?…ええ。ヴァナディーズ先生に何かあっては困ります。」
『少し待て、相手は既に殺気立っている。
戦いになる。備えが要る。』
ゴゴッゴッ…ゴロゴロゴロゴゴゴゴゴゴ…
《
ルクレティアが
「ゴ、ゴーレム!?」
『ロック・ゴーレム。
ワシが召喚した。』
ルクレティアが装備している
今回のゴーレム召喚はまさにそれで、《
「い、いけません《
ゴーレムなんて目立ちすぎます!」
『
それより行くぞ。間に合わなくなる。
ゴーレムが中に入るから、御主はあの
「わ、わかりました。」
何とか目立つ行動は避けたいルクレティアとしてはゴーレムを元に戻させたかったが、「間に合わなくなる」と言われては致し方ない。
ズンッ、ズンッ、ズンズンッ
ロックゴーレムがヨタヨタとよろけるように歩き、
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