第348話 ルクレティア奉呈の発表
統一歴九十九年五月二日、午前 - マニウス要塞司令部/アルトリウシア
本来であれば、ルクレティアが毎月アルビオンニウムの
それが今回、
一応、友好関係にあるとはいえ異なる属州の軍隊を迎える以上、
また、現在サウマンディア側からアルビオンニウムに派遣された神官たちによって行われているケレース神殿の降臨後の調査も監視する必要がある。そもそも、今までアルビオンニア側から誰も派遣してなかったことが問題なのだ。
そして、そこへ派遣される部隊だが、当然ながら秘匿体制維持の都合上、降臨について知っている将兵であることが望ましい。さらに言えば、降臨について何も知らない一般の
こうした状況から、現在
「では、やはりルクレティア様が行かれることになったのですか?」
護衛隊の隊長に任じられ
アルビオンニウムへ行ってケレース神殿で祭祀を執り行う護衛対象はここ数日で変更が繰り返されていたのだ。最初はルクレティアだったのだが、三日前になって急に別の神官にすると告げられ、昨日になってルクレティウスが派遣されると通知があり、さらに出発当日である今日になってからやはりルクレティアが行くことが告げられたのだった。
「そうだ、ルクレティア様で最終決定だ」
アルビオンニア子爵公子にしてアルトリウシア軍団を束ねる
「し、しかし、よろしいのですか?
ルクレティア様から
幕僚の一人から懸念の声が上がる。無理もない。彼らは四月十日の降臨以来ずっと、《
「それについてだが、重大な発表がある。」
アルトリウスが声を強めて前置きすると、全員の注目が集まる。
「ルクレティア様は昨日、リュウイチ様より
「「「「「「おおお~~~」」」」」」
会議室にどよめきが起こる。
「更に、ルクレティア様はリュウイチ様より、貴重な
アルトリウスの発表に室内のどよめきは更に増す。
「で、ではルクレティア様は本当に
この
「二人目の
「
「これから更に増えるかもしれん。いや増えるだろう!」
「実に
「あのっ!」
皆がお祝いムードに湧く中、軍団幕僚の一人、アシナが声をあげた。
「それでしたら、余計にルクレティア様はとどまられた方がよろしいのではないのですか?」
もっともな質問でありアルトリウスの方も当然想定していた質問だった。アルトリウスが答えようとしたが、ルキウスがこれを制し、代わりに答える。
「
というのも、リュウイチ様がルクレティア様に
ルクレティア様はリュウイチ様のそのお気持ちに御応えすべく、アルビオンニウムへ参られ、お勤めを果たされる御所存である」
アルトリウスにはある程度この事を話してあったのでアルトリウスにそのまま説明させても問題は無かったのだが、ここ数日でアルビオンニウムへ行く神官の人事を二転三転させ、現場を混乱させたのは他ならぬルキウス自身だったことから、あえて自分で説明したのだった。
「では、今後はルクレティア様も本格的に聖女として扱うということでよろしいのでしょうか?」
「無論だ。だが、降臨の事は未だ秘さねばならぬ。
当然ではあるが、外ではこれまで通りスパルタカシア様とお呼びせよ」
「質問、よろしいでしょうか?」
今度は別の軍団幕僚テルティウス・ウルピウス・ウェントゥスが質問を求めた。彼はアルトリウシアへ船で来るサウマンディア軍団の増援部隊を迎えに行くために、今日この後すぐにサウマンディウムへ発つことになっていた。
「許す」
「ありがとうございます。この、ルクレティア様が御同衾を許され、
テルティウスが質問を終えるとアルトリウスがルキウスに、テルティウスがこの後サウマンディウムへ向かうことを耳打ちする。報告すべきなのは当然だが、要は彼はプブリウスどのように報告したらよいかを問うているのだった。
リュウイチがルクレティアに魔導具を与える代わりに、リュウイチにルクレティアの同衾を認めさせ、なおかつ昨夜は実際に同衾に及んだ…というのが事実ではあるが、その詳細についてはルキウスはあえて伏せて発表している。いくら相手がプブリウスとはいえ、本当のことを教えればルキウスの画策は間違いなく問題視されるだろう。ルキウスが責任追及を逃れるためには、あくまでも先にリュウイチとルクレティアの自発的な同衾があり、その後魔導具が与えられたという事にしなければならないのだ。
だがプブリウスには手紙やマルクスを通じて、リュウイチが十八に満たない女性には手を付けない意向であると伝えてある。ルクレティアが十八どころか十六にも満たない事はサウマンディア側も承知のことだから、何故リュウイチがルクレティアに手を付けたかについて、サウマンディア側は間違いなく疑問を抱くだろう。
「ああ、当然だな。ああ…そうだな、そのための手紙をしたためよう、預けるので持っていくがいい」
「了解しました」
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