第315話 現況報告
統一歴九十九年四月二十九日、昼 - マニウス要塞司令部/アルトリウシア
徹底的に人払いを敷かれた
とはいっても、リュウイチもリュキスカもずっと
この報告会はカールの
これは建前の上では、復旧復興事業のための資金を融資してくれているリュウイチに対して、その成果を報告しすることで融資が役に立っていることを理解してもらうというものではあったが、しかしアルトリウシア貴族側からするとアルトリウシアの現状がすべて上手くいっていることをアピールすることで、《
だから新たに問題が生じた場合はリュウイチには伏せておき、問題への対応方針が決定され、解決への目途が立った後に「こういう問題がありましたが、これこれこう対処するよう決定しました。すべて順調です。」というような報告がなされるよう事前に示し合わされている。
「
「
「崩落していたウオレヴィ橋の修理用資材の調達が完了しました。本日から修理工事を本格化させており、工事を担当している棟梁の話では明日までには再開通するそうです。それが終わり次第ヤルマリ橋の方の修理に着手する予定で、資材の準備も問題なく進行しております。」
「
この際、駐屯地の住居を一度解体し、アルトリウシアへ移築することになっており、アイゼンファウストとアンブースティアの両
測量と縄張りは既に開始されており、向こうでも建物の解体が始まっております。このまま順調に進めば雪が降り始める前に、作業は完了するでしょう。」
それらのプロジェクトは既に聞いていたものの進捗状況であり、いずれも「予定通りです」や「順調です」に集約できる内容だった。リュキスカなんかは話の内容に既に興味を失っており、抱きかかえた赤ん坊をあやすふりをして赤ん坊の寝顔を覗き込んで、額を撫でたりしている。まあ、寝てないだけマシだろう。どうせ男尊女卑社会のレーマ帝国では、女領主のような例外を除き、女がこのような会議の場で発言することなど許されないのだ。出席が許されているだけでも、異例の厚遇を受けていると言ってよい。もっとも、リュキスカ本人からすればはた迷惑な厚遇でしかなかったが…。
「先週サウマンディアからお越しのマルクス・ウァレリウス・カストゥス殿を通じて
詳細はまだ決まっておりませんが、アルトリウシアとアルビオンニウムにそれぞれ一個
サウマンディアから増援が来ること自体は以前にルキウスが話していたが、ティトゥス街道整備については話していなかったのでルキウスが捕捉説明をする。
「現在、属州アルビオンニアの中央…地図で言うこの部分ですな…アルビオンニウムからズィルパーミナブルクまでのこの地域をライムント地方と呼んでおるのですが、アルトリウシアとライムント地方を結ぶ街道は現在二つしかありません。
一つは
リュウイチの隣に座っているルキウスがリュウイチの前に地図を広げ、指をさしながら位置関係を説明する。
「アルビオンニウムが放棄されて無人となったためティトゥス街道再整備の優先度は低く、工事は後回しにしておったのですが、今回サウマンディアから支援をいただけることになりましたので、復旧に着手することにしました。」
『こっちのグナエウス街道でしたか?
この街道が通れるのに、ティトゥス街道を今整備する必要があるのですか?』
「いい質問ですな、さすが降臨者様は知恵に恵まれておいでだ。
実はグナエウス街道が通る
『こっちのティトゥス街道は冬でも大丈夫なんですか?』
「
『でも、街道がつながる先はアルビオンニウムですよね?
街道を整備するならアルビオンニウムも再整備しなければ意味が無いのではありませんか?』
リュウイチがティトゥス街道をアルトリウシアとライムント地方の間をつなぐ物流ルートとして考えていたために生じた疑問だった。
ティトゥス街道がつながる先にあるアルビオンニウムは放棄されて無人の廃墟と化している。ライムント地方で人が済んでいる町に行くにはアルビオンニウムを通り過ぎて、ライムント街道をグナエウス街道が合流するシュバルツゼーブルグまで進まねばならない。馬車で急いだとしても
「アルビオンニウムはいずれ再整備する必要はあるでしょうが、今回の街道整備は通信網の回復を意図したものです。」
『通信網?というと、早馬ですか?』
早馬だとしてもティトゥス街道を通ってシュバルツゼーブルグへ行くにはアルビオンニウムを通過することに変わりはない。そして、距離を考えればアルビオンニウム近辺に中継拠点が必要になるのは明らかだ。
「それもありますが、街道の途中に設けられた
『ああ、モールス信号があるんですか?』
「ええ、《レアル》より伝えられております。」
驚くリュウイチにルキウスはにっこりと笑って答えた。
リュウイチはどこかで腑に落ちないものを感じていたが、
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