第251話 マルクス上陸
統一歴九十九年四月二十一日、夕 - セーヘイム/アルトリウシア
逃亡した
その席でサウマンディアからトゥーレスタッドに
セーヘイムに戻ったサムエルは『スノッリ』号へ乗り込む。サムエルの乗船である『ナグルファル』号は主要メンバーがエッケ島への補給物資輸送を兼ねた偵察任務に行ってしまっていて動かせなかったし、『スノッリ』号はマルクスの送迎の準備を昨日から整えて待っていたからだった。『スノッリ』号の
じゃあ、何でサムエルが『スノッリ』号でマルクスを迎えに行くのか?
相手は
そうした関係者の中で一番何も聞かされていないのはどうやらサムエル自身のようだった。昨日、話を聞けるかと思っていたが、留守中の出来事を聞いただけで終わってしまった。どうもなし崩し的に
釈然としないままトゥーレスタッドへたどり着いたサムエルは、そこに停泊していたサウマンディアのスループ艦を見つけた。待っていたマルクスと挨拶を交わし、マルクス自身と荷物を『スノッリ』号へ移すと同時に、預かっていたサウマンディアへの手紙と追加の伝書鳩をスループ艦に載せた頃には既に日は傾きかけていた。
サムエルとマルクスを乗せた『スノッリ』号がセーヘイムへ戻ったのは、家々で夕食の準備がほぼ整おうとしている時間帯だった。赤に近いオレンジ色に染まったセーヘイムの船着き場では早くも
『スノッリ』号から桟橋の上に
「サムエル!」
「ヨンネ!ここだ!!」
「サムエル!御客人は!?」
「いるぞ!」
ヨンネの問いかけにサムエルが答えると、マルクスは船べりに歩み寄って手を振った。
「私がマルクス・ウァレリウス・カストゥスだ!」
「ウァレリウス・カストゥス卿!
私はヘルマンニ卿にお仕えする
ようこそアルトリウシアへ!」
「ありがとう!何か御用かな!?」
「ウァレリウス・カストゥス卿、実は
お急ぎでしたら馬車を御用意しますが、到着するのは
宿をご用意いたしましたので、お急ぎでなければそちらへご案内いたしたく存じますが、いかがいたしましょうか!?」
二人は驚いた。今日はマルクスを
「ホントかヨンネ、何があった!?」
「何があったかは分からんが、急に予定が変更になったらしい。
二時間ほど前にティトゥスから早馬が来てそう言われた。
もし御客人がセーヘイムで御宿泊になられるなら、明日馬車で
サムエルの問いにヨンネが答えると、サムエルとマルクスは顔を見合わせた。
海を越えて来る以上は二~三日の日程のずれなど珍しいことではない。本当なら昨日到着の予定が一日遅れたからといってエルネスティーネやルキウスが気分を害したということも考えにくい。ただ、伝書鳩を使って今日は確実に到着すると伝えてあったのに、そしてそれを受けてサムエルも迎えに来てくれたのに、肝心のホストが他所へ移動してしまうというのもおかしな話だった。
マルクスは
「ヨンネ殿とやら、明日は日曜日だろう!?
「申し訳ありませんが『
ただ、聞いた話ですが侯爵家の御家来衆も皆そろって
「
「ええ、何でも昨日、先遣隊が
ヨンネの答えを聞いてサムエルが補足した。
「ウァレリウス・カストゥス卿、
その先遣隊はそろそろ到着する頃ですので、おそらくそれでしょう。
御存知とは思いますが、今現在
「なるほど、閣下御自身が来られていて、それを出迎えに行ったという事かな?」
「多分・・・そうではないかと・・・」
マルクスはサムエルの説明で腑に落ちたようだった。
「例の御方もマニウスにおられるのでしたな?」
「はい。」
マルクスとサムエルの話は桟橋にいるヨンネまでは届いていなかった。ヨンネはマルクスに向かって返事を促した。
「宿はセーヘイムの
もちろん、
お急ぎでなければ、是非こちらで御宿泊ください!!」
「わかりました、お世話になりましょう!」
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