第4話 精霊召喚
統一歴九十九年四月十日、朝 - ケレース神殿「水晶の間」/アルビオンニウム
久しぶりに顕現した世界はひどく殺風景だった。
前回召喚されてから、百年くらい経つか・・・。
今がいつか、どれだけ眠っていたのか、ここがどこか、そんなことはどうでもいい。ただ燃やし焼き尽くすことこそが吾が使命。
だが、その力を振るい焼き尽くすべき敵の姿は見当たらない。何もない部屋の真ん中で、砂にまみれた
まあ、召喚された以上は挨拶くらいしとくかと思ったところでふと気になった。
こいつは本当に自分の主なのか?
姿形は何ら変わらない。与えられる魔力も確かに慣れ親しんだ主の物に間違いないが、どこか雰囲気が違うような気がする。
「おお、出た」
主が驚いたように言った。
『何がだ?召喚したんだろう、
「おおっ、しゃべった!?」
何を言ってるんだコイツは・・・
『しゃべったら何かおかしいか?』
「ああ!いや・・・悪い」
何したいんだコイツは?
『で、何の用だ?』
「いや何、ちょっと試しに召喚してみただけだったんだが・・・」
『敵を倒せとか、何かを焼けとかいうわけではないのか?』
「ああ、そんなんじゃない。」
両手を振って否定された。
まったく、《
『ところで主様はこんなところで何をしておるのだ?』
「いや別に、ここで目覚めたから何をどうしていいか状況を確認しようとしてて、メニューに精霊召喚なんてあったから試しに召喚してみたところだ。」
用もないのに呼び出したという事か・・・
『・・・・・まあ、魔力さえ供給してくれるならこっちは何でも良いが・・・』
「まあアレだ、話せるなら丁度いい、これって何?」
何が訊きたいのだコイツは?
『これとは?』
「この・・・・・世界?」
『知らん。だいたい、この世界は何かと訊かれて答えられる奴なんかいるのか?』
そんなもん、考えたことも無いわ。
「それもそうか、いや聞き方が悪かったか・・・」
『そもそも主様は自分でここに来たんじゃないのか?』
「まあ、そうなるのかな?」
『・・・じゃあここがどこなのかぐらい知っておろう?』
「知っているというか、知らないというか?」
『なんじゃそら・・・戦いに来たんじゃないのか?』
「いや?」
わけがわからない。
『じゃあ何しに来たのだ?』
「・・・あいさつ?」
『・・・あいさつ?』
「あー、何ていうか、俺はこの
『「だあくないと💛」様本人ではないと?』
なんとなくそんな気はしたが・・・
「・・・そう。俺は
『で、ここに来たわけか?』
「そう、事情は理解してくれた?」
『なんとなくな』
そうか、死んだのか・・・。
「で、『だあくないと💛』と生前付き合いがあった人に会いたいんだけど・・・」
『もう居ないと思うぞ。』
「何で?」
『ほかの
「百年!?狩りつくした??」
何も知らんのか・・・別人というのは間違いないようだな。
『プレイヤーが戦乱を煽り、この世界の人々を殺戮しているのを止める・・・とか何と言っておったな。
そして「だあくないと💛」様は世界中のプレイヤーを狩るためにその
あと
「あいつPKやってたのか・・・」
『プレイヤーだってたくさん殺してたんだし、自業自得だろう?』
「てか、今『この世界の人々』って言った?」
『言ったぞ?』
「ここはやっぱりゲーム世界じゃないのか?」
『
その「ゲーム世界」ってのが何なのかは知らんが・・・
「いや俺にとってはとかじゃなくて。」
『何が言いたいのか分からんな。』
「つまり、現実じゃないゲームとして作られた仮装の空間なんかじゃなくて、独立した一つの世界なんじゃないのか?
パラレルワールドとか?」
コイツが何を言ってるのかわからん。
『難しい事を訊くな。』
「難しい事って・・・」
『吾は《
燃やし燃えることだけが己の存在意義だ。
世界がどうとかなどどうでもいい。』
「お前だって俺が『だあくないと💛』か別人かは重要なんじゃないのか?
主人なんだろう?」
なんだって人間って奴ぁこうも分からん事をゴチャゴチャ考えたがるんだか・・・
『魔力を供給してくれさえすれば供給するのが誰だろうがかまわん。
吾に魔力を供給しているのは「だあくないと💛」様の身体だ。
今その身体の持ち主が誰かなどどうでもよい。』
「忠義とか無いのか?」
『死んだ者にか?魔力を供給しない者に対価を要求する資格など無いだろう。』
「・・・いっそ清々しいな。
世の中お前みたいなのばっかりだったら、給料も
『何の話をしてる?』
「いや、こっちのことだ。」
『それはそうと、せっかくこっちの世界へ来たのだ。楽しまんか?』
「楽しむ?」
『戦いだ!敵を焼き、殺し、奪う!』
「いや、殺すって・・・ゲームじゃないんなら人殺しなんかしたくないよ。」
『
そう言うと《火の精霊》はおもむろに部屋の扉めがけて突っ込んでいった。
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