第17話無職でもスキル割り振っていいですか?

 掃除を一通り終え俺たちはリビングで一息ついていた。スレンはまだ怒りが収まっていないのか、ソファに座っ多状態でこちらを延々と睨み付けている。俺が移動するとスレンの顔も俺に合わせて動く。獲物を捕らえる前の猫のようだ。


 ネビアは俺とスレンの攻防を反対側のソファに座って観戦し、楽しんでいるようだ。時折スレンの真似をして一緒に俺の動きに合わせて顔を動かす。俺は2人を軽くあしらった後、窓の近くへ行き、外の様子を眺める。


 顔を覗かせてみると、数時間前まで周りを明るく照らしていた太陽は沈んでいる。代わりに少し欠けた月と共に、星々が少しずつ出始めていた。元の世界にいた時は、星なんて見ることはなかったな。星の明かりよりデスクトップの明かりを見てる回数の方が多い気さえする。まぁ、もし見たとしてもこんなに綺麗だとは思わないけど。


「空ってこんなに綺麗なんだな」

 柄にもないことを言ってしまった。思わず口から出た言葉に反応する奴がいないかと、3人の方をチラリと見る。スレンとネビアの2人は俺のことはお構いなしに雑談をしている。だが、カナは俺の言葉を聞いてたようだ。


「ねぇー……星を見るよりご飯食べに行きましょ! 私もうお腹ペコペコよ……」

 カナは椅子に座り、足を交互に前後させている。花より団子とはこいつのことを言うんだろうか……。

 こいつ、そもそもちゃんと掃除してなかったよな! ハープで生き物操って掃除させてるのに急かしやがって!

 少し羨ましいと思ってしまってた自分が恥ずかしい。


 でもお腹が空いて来たのも確かだ。


「じゃあご飯に行くか」

「「「ご飯!!」」」

 その一言を発した途端、3人の目が輝いてこちらを見る。立ち上がり、玄関へ向かう。こういう時は行動が早いんだよな……。俺も3人の後を追う。


 暗闇の中、ギルドの明かりが外に漏れている。その中では談笑して盛り上がりを見せている者。酔い潰れている者。黙々と料理を食べている者。様々な人々がいた。俺たちも中に入り、料理を食べ酒を飲み盛り上がっていた。


 豪快にアワアワビールを飲むカナ。その勢いは他の冒険者にも引けを取らないくらいだ。飲み終えると新しい酒を頼み、また飲み始める。その繰り返しをしている内、早々に酔い潰れてしまった。テーブルに突っ伏してうるさい寝息を立てる。カナを除いた俺たち3人は料理を食べていた。


「んんー! 何回食べても美味しいですね! あとはアワアワが飲めたら最高なんですが!」

「お前は見た目的に駄目だ。ジュースも美味しいから我慢しろ」


 スレンは見た目が幼く見える、酒なんて飲んでる絵なんて倫理的にアウト。スレンは不満そうにしてるが、料理を食べると一瞬で幸せそうに顔になる。表情の変化が激しいから見てて面白い。ネビアは少し紅潮しているが、酔ってはいないのかいつもと変わらないように見える。


「お前、少し顔が赤いけど大丈夫か? もしあれなら、飲むの止めとけよ」


「問題ないぞ。顔が赤くなるのは昔からでな。飲んだら……少し体を……誰かに……預けたくなるだけだ……」

 そう言ってネビアは俺に体を預けて寝てしまった。女の人に体を預けられる体験なんて今までない。胸の鼓動が早くなっているのが自分でも分かる。黙っていればもの凄く美人だ。整った顔立ちに長い睫毛。今まで1人だったのが不思議なくらいだ。


「ムショさん? 顔赤いけど大丈夫ですか?」

 黙々と食べながら俺の心配をするスレン。顔が赤くなっているのが緊張のせいなのか、酒のせいなのか自分でもわからない。だが、あまり酔った感じもしないのできっと緊張のせいだろう。


「大丈夫。気にしないでくれ」

 とわ言ったものの、寝ているネビアを見続けていたらこっちがおかしくなりそうだ。俺は何か別のことを考える。俺のジョブのこと、3人のジョブをこれからどうやって扱っていくか……そういえば、昨日スレンがクエストで放った魔法凄かったな。どうやったらあんな魔法が打てるようになるんだ? 聞いてみるか。


「なぁスレン、昨日の魔法ってどうやって覚えたんだ? 誰かに教わったりしたのか?」


「あへはしゅきるでしゅふとくししゃんでしゅ」

 口に食べ物を含んだまま話すスレンの言ってることが全くわからない。


「食べてから話してくれ。なんて言ってるのか全然わからん!」

 注意すると、スレンは口を必死で動かす。横に置かれたジュースを口に付け、食べ物を喉に流し込む。落ち着いたスレンは先程の言葉を繰り返して言う。


「あれはスキルで習得したんです」


「スキル? 具体的にはどうやって習得するんだ?」


 質問すると、スレンは「それはですね……」と言って、ポケットに手を伸ばし何かを取り出そうとしている。

 そしてポケットから出て来たのはギルドカードだった。ギルドカードに習得の秘密があるのだろうか?


「ギルドカードの裏にジョブ専用のスキル習得の場所があるんです」


 スレンはカードの裏面を俺に見せる。そこにはスキル欄があり、スレンが昨日放った雷の魔法もそこに記されていた。自分にもあるのか確認するため、自分のカードを取り出して裏面を見る。すると、スレンとは異なったスキルが色々とある。その中でも『? ? ?』と書かれたスキルが特に気になる。


これはなんだ? 不思議に思っていると、スレンが俺のカードを覗き込む。


「あれ? ムショさんのは少し不思議ですね。なんですか? この『? ? ?』って」


「俺も知らない。これってスレンのカードにはなかったのか?」


「いえ、スキルは全部名前が書かれているものなんです。ムショさんのコレは見たことないです。試しにスキルポイントを割り振ってみてはどうですか? 50ポイントあることですし」


 自分のスキル欄の横に書かれていた50がスキルポイントらしい。試しに20ポイントくらい割り振ってみるか。

 俺は『? ? ?』に20ポイントを入れてみた。




 続く

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