第16話無職でも掃除してもいいですか? その2

 リビングへ行ってみると、ひと段落ついたネビアがソファに座っていた。


「ん? ムショか。どうだ、綺麗になっているだろうか?」


 俺の気配に気づいたネビアが意見を求める。

 リビングを見渡すと埃ひとつ無く、まるで床が光り輝いてるように見える。1人でここまで出来るのはマジで凄い。


「凄いな……広いからまだ終わっていないと思っていたんだけど。手伝いは必要なさそう……」

 ピチャ……。


 ピチャ?


 リビングに足を踏み入れてると足に何か冷たい液体に包み込まれる感触に襲われる。足下に目を視線を向けると、透明な液体が俺の足を冷やしてくれている。そして俺はネビアに質問する。


「……ネビア。これは?」

「気づいてくれたか! 水を敷いてみたんだ。涼しくて気持ちいいだろ?」

 ネビアは無邪気に足をバタつかせて水を跳ねさせる。


「うん。これすぐ片付けてね」

「何故だ! こんなにも気持ちが良いんだぞ! カナとスレンも賛成してたと言うのに……」


 あいつらの感性はどうなってるんだ! ネビアも薄々似たような雰囲気はしてたけど!

 ダメだ。多数決に押し切られてはいけない……ここは強く言わなければ!


「ここは俺たちがくつろぐ部屋なんだぞ! 歩くたびにピチャピチャ音が出たら気が散る! それに足もふやける!」

「うむ……ムショの意見ももっともだ。片付けることにしよう!」


 ネビアはモップを持ち、後片付けを始める。

 あの2人が頑固な分ネビアはバカ正直で助かる。こいつの扱いが一番楽かもしれない。


「じゃあ終わったら呼んでくれ。それまでへやでゆっくりしておくから」

「了解だ! ムショ、ちょっと頼まれてくれないか?」

「なんだ?」

「実は着替えるための洋服を部屋に忘れてしまってな。取って来てもらいたい」


 リビングを立ち去ろうとする俺を呼び止め、頼み事をするネビア。

 よく見るとネビアは全身濡れていた。濡れた服が肌に密着してネビアの体型が露わになっている一方、体を隠す重要な部分の布が逆に目立つ。


 初めは気づかなかったが、気づいてしまった以上見ない方が失礼というものだ。

 俺はネビアを凝視する————主に体の部分を。


「ムショ……欲望に忠実な君も嫌いじゃない。しかし私の身体が寒がっていてな、充分堪能したら服を持って来てくれ」

「あぁ——分かった」

 数十分堪能した俺はネビアの部屋に行き、着替えの服を持って再びリビングへ戻る。


「助かった。もう少しで低体温になる所だった。所で、ちゃんと下着は紐のやつを持って来てくれただろうか?」

「ちゃんとあるから! さっさと着替えろ!」


 羞恥心のかけらのないネビアは堂々と聞いてくる。だが、俺もバカではない!

 もちろん持って来てやった。なんなら上のやつも際どいやつを選んでやった。抜かりはない。


 俺は着替えの服をネビアに渡して自分の部屋へ戻る。

 その途中、何やら落ちているのに気づいた。近づいて拾い上げて観察してみると布に紐が付いている。

 そう、大人な女性が下に身に着けるものだ。きっとネビアのものだろう。


「あれ? さっき落としちゃったのかな……」

 ということは……ネビアはいま現在、履いていない! 早く届けに行かないとネビアが可哀想だ。俺は紐を身につけてないネビアを見に————いや、届けにリビングへ行く。


「ネビアー、お前の紐を届けに……あれ? スレンしかいないのか」

「ムショさんも来たんですか。ネビアさんならいないですよ」

 ネビアの代わりにスレンがソファに座って何かを探しているようだ。


「そっか——どこに行ったか知ってる?」

「ネビアさんならさっき何かを取りに部屋に行きましたよ」


 遅かった……もっと早く来ていれば拝めたのに。

 布を強く握りしめる。仕方がない、ネビアがくるまで待っておこう。俺はスレンの隣に腰を下ろす。


「ネビアさんに何か用があったんですか?」

「ああ。ちょっとな……」


 知りたそうなスレンだったが、ネビアが来てから教えることにした。あいつの羞恥心というものを見てみたい! だから今は黙っておこう。スレンは諦めたのか、またキョロキョロ見回して何かを探している。


「まだ何か探してるのか? 探してるものを言ってくれたら俺も手伝うのに」

「いいんです! ムショさんは気にしないでください!」


 聞いても教えてくれないなら探しようがない。俺は手伝わず座ってネビアを待つ。

 しばらくするとネビアがリビングへ戻って来た。


「2人とも何をしているんだ?」

「お前を待ってたんだよ! ほら、お前のパンツ。これお前のだろ」

 さぁ! お前の恥ずかしがってる顔を見せてみろ!


 俺はスレンとネビアの前で紐布を見せる。するとネビアは不思議そうな顔、スレンは色白い顔が徐々に赤くなっていく。


「ムショ。これは私のパンツではないぞ?」

「えっ……でもこれ紐がついてるぞ。お前以外いないだろ!」

「私はパンツの管理を怠ったことはないぞ! これは私のではない!」

「ネビアのじゃなかったら誰のなんだ……?」


 俺とネビアは腕を組み、考える。


「……私のです」

「ん? 何か言ったか?」

 小声で何か言うスレンに聞き返す。


「それ私のなので返してください! ムショさんの変態!」

 恥ずかしさで今にも頭から湯気が吹き出しそうなスレンは俺から紐付き布を取り上げ、走ってリビングから立ち去るのを見ているしかなかった俺とネビア。


 スレンが走り去った後、ネビアは薄目で俺の方を見ると、「ムショはもう少し乙女心を学んだ方がいいと思うぞ」とだけ言ってリビングを去る。リビングに1人残された俺。


 あいつもあの紐を着けるのか……。少し興奮しました。




 続く





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