第10話無職でも仲間を増やしてもいいですか?その2

 無職がすごい職業?

 俺が知っている無職は最弱職という事くらいだ。スレンの言ってる意味が全く理解できない俺はスレンに理由を聞いてみる。


「無職が凄いってどう言うことだ?」

 俺はスレンに質問する。

「それはですね……はっ!」

 何か閃いたスレンはニヤリと悪い顔を浮かべる。

 そして条件を出してきた。


「教えて欲しかったら私をパーティに入れてもらいましょうか! そしたら教えてあげましょう」

 俺に指を指して 

 条件を出された俺は腕を組んでどうするか考える。

 スレンを仲間に入れて無職の秘密を教えてもらうか、仲間には入れないで無職の秘密も知らず終いにするか。


「…………ハァ。分かったよ」

 諦めてスレンを仲間に迎え入れた。


「やりました! あぁ宇宙よ、あなたのエネルギーの賜物です」

「その一人芝居やめろ」

「失礼な! 一人芝居ではありませんよ。交信してるんです」

(それが原因で今までパーティに入れなかったんだろ!)


 心の中でツッコミを入れ、スレンがさっき言っていた無職の件について聞いてみる。

「それで、無職が凄いって一体どう言うことなんだ?」

「それはですね……昔読んだ本に偶然無職のことについて書かれてたのを少し読んだんです」

「なんて書かれてたんだ?」


 真剣な眼差しでスレンに聞く。


「……忘れました」

 と、スレンはサラッと言い残すと、ポカンとしている俺の横を軽やかに通り過ぎる。

 答えを知らず終いの俺はスレンを呼び止めようとするが、スレンは嬉しそうにこちらを見ながら言う。


「さっ! 早くクエストに向かいましょう! パーティで初クエスト……楽しみです!」

「おい! 話が違う! ちょっと待て」

 と、俺は歩いて行くスレンに対して、怒りを込めた声で言い飛ばしながら追いかけた。


「なあ、どうにかして思い出して下してくれ! 無職の凄さってなんなんだ?」

 葉っぱをかき分けながら歩き続けるスレンに追いついた俺は、無職について何度も聞く。

「もぉ、しつこいですね。忘れたって言ったじゃないですか……」

 スレンは鬱陶しそうな顔をしながら答える。


「そこをなんとか頼む! 今後の俺に関わる! ちょっとした事でもいいから思い出してくれ」

 必死に懇願すると、スレンは「んー」と顎に手を当てて考えている。


「確か……スキルがどうこうだったような」

「スキル? スキルがあるんだな? 他には?」

 記憶を呼び起こそうと頑張ってるスレンに追加で質問する。


「もぉ思い出せません! これ以上は覚えてません!」

 スレンは真っ赤な顔で俺に杖で叩きながら怒鳴る。


「痛い痛い! しつこくて悪かったよ。スキルがあるって分かっただけでも充分な収穫だ」

 無職にスキルがあることを知った俺は嬉しさで思わず口元が緩む。

 それを見たスレンは叩くのを止め、俺から一歩引きながらドン引きしている。


「ムショさんって叩かれて喜ぶ人なんですか……?」

「ちっ、違う! これは叩かれて喜んでたわけじゃない!」

「これからは離れて歩くことにします……私の宇宙が危ういと言っています」


 こちらを見ないように歩くスレンに、俺は「断じて違うからな!」と窘める。

 しかしスレンは聞く耳もってくれませんでした。


 しばらく歩いて森を抜け、昨日訪れた原っぱに到着した。

 奥の方には岩に擬態したアクアクラブがじっとしている。


「着いたぞ」

 目的の場所に来たことをスレンに呟く。

「ここでモンスターを退治するんですね!」

 スレンは「腕がなります!」と腕を組んで自信満々な顔で言う。


「頼りにしてるぞ……えっと、あいつはどこ行ったんだ?」

 上の空でスレンに言う。

 俺は先に行ったカナが何処にいるのか探すために周囲をキョロキョロと見回す。


 すると、後ろの方から「ここよ!」と怒っているのが分かる声が聞こえた。

 振り向くと、腰に手を当てながら眉のシワが寄っているカナが怒鳴り出す。


「あんた今まで何処にいたのよ! 私がどれだけ暇してたのか分かる? 5分よ! 5分! 罰として今日のアクアクラブの蒸し焼きは私が多く食べるから覚悟しときなさい」

 たった5分しか待っていないのに1時間も待たされたような様子でカナは責め立てる。


「あら? この子誰よ? まさか私を待たせている間にナンパ……?」

 責め終わったカナは俺の横に立っているスレンに気がついて質問する。


「違うっての! スレンだ。さっき植物に殺されかけてたから助けたんだよ————」

「なるほど、パーティにねぇ……スレン、私たちのパーティは上級職しか募集してないの。あなたの職業は?」

 俺とスレンが出会った経緯を説明し終わると

 カナは圧迫面接をするかのようにスレンを見る。


「ハイウィザードです!」

 スレンは元気よく答えた瞬間に、カナは「採用よ! 私たちのパーティへようこそ!」と親指を立てた。

 即採用に疑問を感じた俺はカナを森の茂みに連れて行き

 理由を聞いた。


「私と職業が被らなければ誰でもいいわ」

 カナは真剣な顔つきこちらを見ながら言った。

 その言葉は清々しいほどにドストレートな一言だったので、思わず俺も「そっか」と言ってしまうほどだ。


 茂みから戻った無職の俺、ハーピストのカナは新たに仲間になったハイウィザードのスレン。

 心地よい風が俺たちの髪の毛や服をなびかせながら吹き去っていく。


 残っている分のアクアクラブを討伐すべく、俺たちは戦場へと歩き出した。



 [スレンが仲間になった!]














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