第17話

「お義兄さん、俺はこいつを絶対にゆるさねぇ。」怒りが頂点に達しているのを感じた。しかし、そんな俺とは正反対にお義兄さんは冷静だった。余りにも冷静な姿を見て、またまた苛立ちが募った。

「お義兄さんは琳がどんな思いして…どんなに辛かったか…」お義兄さんのシャツを掴みながら涙がどんどん止めどなく溢れた。

「琳の事をそんなに大切に想ってくれてありがとう。琳も海斗君が叔父さんで幸せだったと思うよ。でもね、海斗君の手を痛める事は琳も喜ばないと思うんだ。」

そう言いながら殴って出血している俺の手をポケットからハンカチを出して優しく手当してくれた。

「海斗君、俺が聞くよ。」俺は頷き、後ろに下がった。

お義兄さんが棺桶の顔を覗いた途端

「奏一朗さん、助けて、お願い…ここから出して!」鼻から出血した顔ですがるような甘えた口調だった。その話し方を聞いただけで虫唾が走った。

「君に確認したい事があるんだ。本当の事を話してくれたら出してあげるよ。」

お義兄さんが静かに言った。

「君は俺の娘の琳を殺したのか?」

沈黙が続いた。

「本当の事を言ったら何もしないよ。」優しく話しかけるとゆっくりと口を開いた。

「あたしは…あたしは離婚したのに…奏一朗さんはまだ家族が続いてた…幸せそうに笑って…何であたしだけこんな目に…何で独りぼっちにって思ったら…あの家の前に立ってた。そしたら琳ちゃんがあたしに気づいてニコニコ笑ったの…」言葉が止まった。

「それで、どうした?」お義兄さんが促した。

「琳ちゃんと奏一朗さんと三人で暮らしたら楽しいだろうなぁって思った…」

「…ふぅ…」とお義兄さんが大きく溜息をついた。

「ここに居るのは愛子さんじゃなくて私のはず…琳ちゃんと一緒に居たら奏一朗さんが私の所に帰って来てくれると思った…」

「お前、頭おかしいんじゃねぇの、お前のせいで姉貴がどんだけ辛い目にあったか、分かってんのかよ!」俺は怒鳴った。

「煩い!私の方が奏一朗さんを幸せに出来るのよ、それだけ好きなんだから、あんたなんかに分かる訳ないわよ。」やばい、こいつ、イカれてる、俺はそう思った。

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