第16話

次の日、俺はお義兄さんに言われた通り、仕事に復帰した。所長にはもう少し休んでも構わないと言われたが大丈夫ですと伝えた。

夕方、終業時間が近くなり皆が帰り支度を始めていたが、俺は書類の整理が終わらずにいた。

「間宮君、もう上がって下さい。久しぶりで疲れたんじゃないですか?」所長が優しく声を掛けてくれた。

「休んでいた分の仕事がまだ終わらないので、もう少し仕事していきます。自分が鍵を閉めるので所長も上がって下さい。」

「そうですか?役所に寄らないといけないので、お願いしてもいいですかね。」

「はい。お疲れ様でした。」と所長に一礼した。皆が帰ったのを確認して電話をかけた。

「お義兄さん、こっちはオッケーだよ。」

「ありがとう。三十分後には着くようにするから。」

「分かった。着いたら電話して。」電話を切って準備を始めた。


お義兄さんから着いたと電話がきたので、外に行くと助手席で中川恵が寝ていた。

俺たちは用意していた棺桶に手足を結束バンドで縛った状態の中川恵を寝かせた。

一号室に運び、二人で棺桶の蓋を釘で打ち付けている時に目を覚ました。

「ちょっと、何なのよ!これは。出してよ!」棺桶の中で暴れ出した。俺は棺桶の顔の部分の扉を開けた。

「静かにしろ。」

「あんた誰よ!こんなことしてただで済むと思ってんの?」

「お前がそんな事言えるのか?」

「あたしが何したってのよ!」中川恵の態度に俺はぶち切れた。

「ふざけんな!お前、間宮琳に何した?」俺は棺桶を覗き込みながら怒鳴った。

俺の言葉に中川恵の顔が一瞬、強張ったのを見逃さなかったが、次の瞬間、

俺の頬に冷たいものが当たった。唾をかけてきたのだ。俺の中で感情がブチ切れたようにプツッと音がしたと同時に俺の拳が顔面を直撃していた。

「海斗君!」お義兄さんに声を掛けられ我に戻った。


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