第12話

「あの日…洗濯物を入れるのにベランダに出たのよ。そしたら琳ちゃんが歩いてきて、隣にいるのが琳ちゃんママかと思って声かけようとしたんだけど…」

「その女は誰だったんですか?」俺は逸る気持ちを抑えながらも前のめりになっていた。

「……海斗君…覚えてる?前に幼稚園が一緒だった中川仁君を。」俺はその名前を忘れていなかった。

「…もしかして義理兄の不倫相手の子ども?」

「そう…琳ちゃんパパと仁君ママが不倫してお互い離婚になっちゃったでしょ。あれから仁君ママ…子どもの親権は旦那さんの方になっちゃってね。旦那さんが子ども二人連れて実家の沖縄に引っ越しちゃったの。」

「それで仁君ママは?」

「ん~彼女の実家は隣町だって聞いた事があるんだけど…彼女が今どうしているかは全然分からなかったのよね。そしたら琳ちゃんが手を繋いで歩いている人が彼女だったから…私ビックリしちゃって。」俺は怒りで手が震えてきていた。

「スミレちゃんママ、ありがとう。」俺は一礼して帰ろうとすると手を掴まれた。

「海斗君、どうするの?」スミレちゃんママが心配そうに俺の顔を見た。俺は笑顔を作り

「何もしないよ。警察にお願いしに行くんだよ。心配しないで。」掴まれた手をゆっくり下ろした。

「そう…私に出来る事があったら何でも言ってね。」スミレちゃんママの目に涙が滲んでいた。

「じゃあ~早速で申し訳ないんだけど…琳が居なくなったこれからも姉貴の友達でいて欲しい。」

「そんなの当たり前じゃない。私はお姉さんの友達なんだから。」力強く言ってくれた。

「ありがとう。姉貴が聞いたら喜ぶよ。宜しくお願いします。」と頭を下げた。

「任せなさい。」と胸を拳で叩いて見せた姿が可笑しく二人で笑いあっていた。

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