第11話
俺は所長に話、暫く休暇をもらう事にした。あれから姉貴は寝込んでしまい、親父も母さんも光を失ったように、皆が暗闇の中でやっと息をしているような状態だった。そんな時、家の電話が鳴った。琳の検視が終わったので自宅に送りますと警察から連絡がきた。俺は姉貴の部屋をノックした。ドア越しに
「姉貴…琳が帰って来るよ…。」暫く待っているとドアが開いた。ほとんど食事もまともに摂っていないせいか頬がこけ痩せ細ってしまった姉貴が顔を出した。
「…ほんと?」
「あー。さっき警察から連絡がきた。」
「じゃあ、琳の好きなハンバーグ作って食べさせてあげたい。」
「そうだな、みんなで迎えてあげよう。」今にも倒れそうな姉貴を支えながら二人でリビングに向かった。
俺は休暇を利用して琳が居なくなった日の事を近所に聞いていた。
あの日、姉貴が電話を取った僅かな時間に誰が家の周りに居たのか、知っている人が居るかもしれないと思った。何件か聞いていくが
「警察にも聞かれたんだけどね…見てないのよ。」と。半ば諦めかけた時
「あの日、琳ちゃんと手を繋いで歩く女の人が居たのよ。」と話し始める人が現れた。
「え、…その人、知ってますか?」
「それがね、どこかで見たことあると思うんだけど…思い出せなくてね~。」
「そうですか…思い出したら連絡下さい。」と俺の携帯の番号を伝えた。
琳が手を繋いで歩くというと知り合いってことか。まだ二人を見ている人が居るんじゃないかと確信した俺は琳の幼稚園のママ友にも話を聞きに行った。
地区が同じで琳とよく遊んでいて姉貴とも仲が良いスミレちゃんのママに会いに行った。呼び鈴を鳴らすと
「はーい」と返事が聞こえたので
「間宮です。」と伝える。暫く待っていると玄関が開いた。
「…海斗君、どうしたの?」
「スミレちゃんママに聞きたい事があって。」
「とりあえず中に入って。」
「お邪魔します。」
「お茶入れるから座って。」とリビングに通されソファに座った。
「お姉さん、大丈夫?…琳ちゃんの事を思うと…。」と目に涙を溜めながらお茶を出してくれた。
「有難うございます。姉貴は寝込んでしまって…。」
「そうよね。大事な子どもが居なくなったんだもの…どう立ち直っていいか分からないと思う。」
「スミレちゃんママ…琳が居なくなったあの日、琳が女の人と手を繋いで歩いていたらしいんですが、見てませんか?」涙を拭っていたスミレちゃんママの手が止まった。そして、ゆっくりと顔が上がり俺を見ながら
「…見たわ。」
「え…。」俺の心臓の鼓動が早くなるのが分かった。
「誰ですか?」思わず大きな声になってしまった俺にスミレちゃんママが
「しっ!」と口に人差し指を立てた。
「…すみません。…知ってる人ですか?」スミレちゃんママが静かに話し始めた。
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