第4話

休みの日。陽が高く上がったがまだ布団の中で夢を見ていた。ドアをノックする音で夢が覚めた。

「海斗、まだ寝てるの?開けるわよ。」姉貴の声で起こされた。

「…何?」

「今日休みでしょ?ちょっと友達のお見舞いに行きたいから、琳をお願いしたいんだけど…。」

「母さんは?」

「お母さんとお父さんで買い物行っちゃったの。」

「うん…分かった、いいよ。じゃあ、琳とアウトレットでも行ってこようかな。」

「そうしてくれると琳も喜ぶわ。頼むね。」布団から起き上がり琳の所に行くと

「おじちゃん、今日はよろしくお願いします。」と丁寧にお辞儀をしてくれた。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」とお辞儀で返すと琳が満面の笑顔で

「やったー。」と抱き付いてきた。琳には適わないなとつくづく思った。


アウトレットに着いてフードコートで軽食を食べた。その後は遊びたいと言う琳を連れてゲームコーナーの隣にあるチビッ子広場で滑り台やジャングルジムを楽しんだ。琳にぬいぐるみを取ってあげたいとUFOキャッチャーにのめり込んだ。

「おじちゃん、頑張って。」

「任せろ。」と言ったものの、なかなか取れずに四苦八苦していた時、お金を入れようとして小銭が落ちてしまった。小銭を目で追っていくと靴に当たった。

「どうぞ。」と彼女が拾ってくれた。

「…ありがとうございます。」と受け取りながら彼女の顔を見た瞬間にビビッと衝撃が走った。一目惚れだ。俺はその場で固まってしまった。

「おじちゃん?」

「…あ、ごめん、ごめん。」と琳に言いながらも彼女の後ろ姿を目で追っていた。見ると彼女はゲームコーナーのジャンパーを着ていた。ここの職員なのか。

「よーし、琳。おじちゃんが取ってやるからな。」

「頑張って、おじちゃん。」興奮する俺の影響を受け、琳まで盛り上がっていた。

取れたぬいぐるみを抱えて助手席でぐっすり寝ている琳と家路に向かう。ゲームコーナーで会った彼女の事が頭から離れずにいた。

その後も仕事中や家に居ても彼女に会いたい想いが膨らんでいったので、常連になって俺の存在を知ってもらうべく休みの度に琳を連れてアウトレットに足しげく通った。初めは挨拶を交わすだけだったが、最近では少し会話をするまでになった。

「こんにちは。」琳が元気よく挨拶した。

「こんにちは。偉いね。ちゃんと挨拶出来て。お名前聞いてもいい?」

「まみやりんです。」

「琳ちゃんて言うの?可愛い名前、お父さんが付けてくれたの?」と彼女が俺の顔を見た。俺は慌てて

「いやいや…俺は叔父です。」

「あ…ごめんなさい。いつも一緒に来られるから、てっきりお父さんかと思いました。」彼女は困った顔をしていたが、そんな彼女の顔も可愛いなぁと見とれてしまった。

「気にしないで下さい。」俺は笑顔で返した。

「おじちゃん、遊びたい。」と琳が俺の手を握っていた。

「あ、そうだったな、広場行こうか。」

「楽しんでって下さいね。」と彼女が手を振ってくれた。もちろん俺にではなく琳に手を振っていたのだが、気にせず俺も手を振り返した。


遊び疲れた琳が俺の背中で寝てしまっていた。俺は琳をおんぶしたまま彼女の所に行った。

「あの…。」

彼女に声を掛けた。彼女が振り返り、俺の顔を見て慌てて

「さっきはすみませんでした。お父さんなんて言ってしまって…。」と深くお辞儀した。

「いいんですよ。」

「あ…琳ちゃん、寝てしまったんですね。」背中で寝息を立てている琳の顔を覗き込んで「可愛い」と頬を擦っていた。

「あの…俺と今度、ご飯でも行きませんか?」言いながら顔が赤くなっていくのが分かった。俺の言葉に彼女が目を見開いた。彼女からの返事が凄く長く感じる。

「私でいいんですか?」

「貴女が良いんです。」自分でもびっくりする位、はっきりと告白していた。しばらく下を向いていた彼女が顔を上げて

「お願いします。」と真っ直ぐ俺の顔を見て言った。余りの嬉しさに

「やったぁ!」と声を上げてしまった。俺の声に背中で寝ていた琳が目を覚ました。

「…おじちゃん?」

「あ、ごめん、ごめん。起こしちゃったな。」目は開いたがまだまだ眠たい琳は背中に寄り掛かったままだっだ。彼女と連絡先を交換し、俺たちは家路に向かった。

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