サプル編第7話 カワイイよりカッコいいがイイ
集落までくると、各地(と言っても三つしかないけど)の集落から手伝いにきた女衆が集まっていた。
「いつもながら皆早いね」
先にきていたあんちゃんの声に集まったんだろうけど、そんなに違わないのにもう集まってるんだから皆元気だよね。
「サプル。あんなに集まってるけど、イイの?」
「構わないよ。全員集まってもあんちゃんなら笑って流すから」
もともと村へのカンゲンが目的でやってるもの。集まるなら多いほうが都合がイイくらいだ。
「まあ、サプルがイイんなら構わないけど、あんなに集まったら捌き切れないんじゃない?」
まあ、五十人くらいなら七人もいれば余裕で調理できる。それで二十人以上集まったらそう思っても無理はないか。
「今日は女衆のお祭りみたいなものだからね、おしゃべりしながらやればイイよ」
調理するのあたしとトアラねーちゃん、他数名いればこと足りるし、配るのはサリバリねーちゃんら娘衆が数人いればイイ。あとは、花としていてくれれば問題なし。港にはあんちゃんの工房もあるし、暇な人らでなんか勝手に作るでしょうしね。
「あ、サプル。今日はよろしくね」
集落の女衆を代表して村長さんとこの若奥さんが挨拶してきた。
「こっちこそよろしくね、ジーンさん」
「結構な人数集まっちゃったけど、大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ。いろいろやってもらうことあるからさ」
交替でやってけば不公平はないでしょうしね。
「じゃあ、いきますか」
と、大移動を開始する。
とは言え、女が集まればおしゃべりの嵐が起こり、進む速度は芋虫に匹敵する。
それにしても女同士のおしゃべりってのはスゴいもんだよね。
まあ、あたしも女だからおしゃべりしたい気持ちはわからなくはないけど、よくここまで赤裸々にしゃべれるもんだと感心するよ。あたしが男なら絶対女に失望するねっ。
なんてことを思いながらなんとか港に到着した。
あたしは、あんまり山から下りないし、港にくるのは五回もない。なんでなにがどこにあるかあまり知らないのだが、あれだけ大きければ嫌でもわかる。
「わー! おっきい船ぇ~!」
あんちゃんが寝物語で語ってくれる中で船は何度もでてきたし、裏山の港で小舟には何度も乗ってきた。でも、あんなおっきい船を目の前にすると我知らず興奮してしまう。なんかカッコいいっ!
自然と足に力が入り、小走りで船へと向かってしまった。
「あ、サプルったら!」
トアラねーちゃんが叫ぶが、興奮したあたしを止めることはできない。
小走りがいつの間にか駆け足に変わり、やがて疾走となった。
丘から見てもおっきかったのに、近づけば近づくほどおっきくなっていく。
目の前まできたら見上げるほどの大きさに、思わず口を開けて見詰めてしまった。
「おう、サプル。来たな」
ほへ~って見てたら船からあんちゃんと会長さんが出て来た。
「あんちゃん、スゴいねこれ! ほんとに船なの? まるで島だね!」
なんだかよくわからないけど、しゃべってるうちに興奮してきた。
「ねぇあんちゃん。中、見てイイ! 中、見たいよっ!」
あたしのワガママにあんちゃんは苦笑したけど、ダメとは言わず、横にいる会長さんを見た。
「前、本で読んだんだが、船に女を乗せるのは縁起がワリーって書いてあったんだが、本当なのか?」
「えーーーっ!」
なんなのその理不尽。ワケわかんないよ!
「まあ、そうだが、サプルなら構わんさ。いや、むしろ乗ってもらいたいくらいだな」
「船員の方は大丈夫なのか? 結構信心深いんだろう船員ってのは」
「そうだな。いるにはいるが、そんなもん関係ねーよ。乗ってなくたって船は沈むし、現にこうして足止めくらっちまった。頼りにならねぇ神より頼りになるダチだ。そのダチが船を救ってくれ、その妹は旨い料理を食わしてくれる。縁起なんてクソ食らえだ」
不敵に笑う会長さん。
「船もカッコいいけど、会長さんはもっとカッコいい!」
あんちゃんの次くらいにカッコいいよ、会長さん。
「アハハ! カッコいいか。サプルはわかる女だな!」
「オレとしてはカッコいいよりカワイイに興味を持ってもらいてーよ」
え~。カワイイよりカッコいいがイイじゃない。
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