4-2 オタクが覚醒すると――な感じ

今日こそ、俺の歴史話を、聞いてもらうぞ!

ところが・・


「部活が忙しくて、お付き合いできないです。すみません」

ゆいちゃんに断られる。

(聞いてくれって!気持ちよくなりたいんだって!)


「あたしは聞きたいなー」

(ももる、解ってる!)


―――和風の高級レストランに移動。


「信長は一気に領地を広げたんだ・・!」

テンション上がってきた!これを待ってた!


「それでそれでー?サラダ追加ー」


「任せとけ!店員さん!サラダ2つ追加!あとお茶!」

喉を潤さないとな!


「そして、信長は・・」


「メル!ダメでしょ!」

ゆい?!なんで来た!


「・・嫌な予感したから来てみれば、やっぱり、奢られてばっかりで!」


「えーこれは蓮人君が、奢るって言ったからー」

(もうそれでいいから、とにかく話させてくれ!)


「言い訳しないで!」


「はーい。ごめんなさーい」


「・・失礼しました、蓮人さん。ももるが勝手ばっかり言って、それじゃ帰りましょ」

「信長運命の日っ!!」

「きゃっ!!」


俺はゆいを遮って話す!もう、帰らせるわけにはいかない!話したいんじゃあ!


「ワクワクするー」

「・・・」

ゆいの表情が、厳しい。どうやら、ももるのお目付け役らしい。


「こんな高そうなお店選んで、変な事考えてるでしょう、ももる・・?」


「えーだって、和風で歴史的で、いい場所だと思ってー」


「その通り!素晴らしい!」

今日は言っていくぞ!もう邪魔はさせんぞ、ゆい!


「君たちは聞かなければならない!

・・信長は京都の本能寺にて、眠っていた。その頃、辺りを囲むのは」


「はい、ゆいちゃん!」

「え、なに?ももる?」


渡したのは、


(本能寺の変 台本)


「メル!こんなくだらないもの作って、読むわけないでしょう?」


「えー、くだらないかなー?」


「バカバカしい!幼稚よ!」


「・・だってさー、製作者の蓮人君ー?」


「・・・・・」


「え?これって、・・蓮人さんが作ったんですか?」


「そうだよ・・」


「ご・・ごめんなさい!私何も知らずに・・!」


「・・いいよ」

(かなりショック)


「・・ゆいちゃん、大丈夫だよ、信長さまは、許してくれるから」


(はっ!そうだ、俺は信長だ!そんな小さなことで、怒らないんだ!)


「気にせずともよい!」


「盛り上がってきたとこで、注文しちゃおー(日本の食の歴史セット)でいいですかー?信長さまー?」


「いい名前の料理じゃな!それにしよう!」


「・・メル!そんな高い物を・・!」


「大丈夫ー。信長さま、心が広いんだから!」


「そうじゃ!」

(俺は盛り上がってるんだ!)


「・・えーと(我が、明智光秀の敵は、他国には、居ない)」

俺の作った台本を、たどたどしく、読む、ゆいちゃん。


そこで、光秀のセリフ!ゆいは頬が赤くなって、恥ずかしがりながら。


「て・・敵は本能寺にあり」


そこで、ももるが頼んだ高級料理(日本の歴史セット)が運ばれる。正に日本の食!ますます盛り上がってきた!更に俺は、


「・・ん?何事じゃ?」

(はい!ゆいちゃん、台本読んで!)


「え・・と、家臣が慌てて信長に伝える。

囲んでいるのは。明智光秀でございます・・」


もう少し元気に言ってもらいたかったが。仕方ない。


「・・光秀が?」

ここで・・決めセリフ。いよいよ、この時が来た!


「是非もなし!」

(決まった、俺の1番好きなセリフ!)


(パチパチパチ!)

大拍手が起こる。


「ももる!iPhoneで、拍手BGM鳴らさなくていいから!」


「蓮人君、今のセリフ、カッコよかったー」


・・ありがとう!ああ、俺は感動に包まれる。



「信長さま。この限定の湯葉、頼んでもいい?」

「いいぞ。是非もなし」


「信長さま、それじゃあ、3種の季節、頼んでいい?」

「いいぞ。是非もなし」


「もういい加減にしなさい!ももる!」


高価な料理がなんだ、この信長が、みんな奢ってやる。


――――


(とにかく、気持ちよかった・・!)

これ以上ない快感と開放感。バイトとか人間関係の悩みが、吹き飛んだ!


財布の中も、完全に吹き飛んだけど。

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