3話 まともな友人現る

「重い―」


「・・・」


「重いよー」


「・・・」


(バケツを持って、なんで俺を見ながら言うんだよ。他にも周りに、男子居るじゃないか?)


「誰か手伝ってくれないかなー?文化祭の、いい場所譲ってあげた男子とかー?」

それって、俺しか居ないじゃないか!なんだよその言い方!


「仕方ないな・・」

俺は持とうとすると。


「メル、何してるの?」


「あ、ゆいちゃん」

五戸ゆい、クラスメイト、ももるの友人らしい。


「きちんと掃除してるの?ももる?」


「もちろん。今、蓮人君が、進んで手伝ってくれて」

(いやいや!押し付けたのはそっちだろ!?)


「嘘でしょう、ももる。見てたから!」


「ごめーん。ゆいちゃん」


ももるは、バケツ持って去っていった。


「すいません。邪魔しちゃって」

ペコリと、礼儀正しい。


「い、いや、大丈夫だよ」


「それでは、これで失礼します」

立ち去った。ここで・・もの凄い疑問。


(なんで、ゆいちゃんは、ももるなんかと、友人になったの?)


って聞きたかった。礼儀正しくて、真面目なのに。変な性格の、ももると友人?俺は正直、ゆいちゃんの事が知りたくなった。



――今日は、気になってた、ゆいちゃんに、直接話をしてみたいと思う。下校時、友人の、ももるは今日部活らしくて、ゆいちゃんだけ。


下駄箱で隠れて待つこと30分。彼女は学校を出る。後ろを着いていく俺。何がしたいかって言うと。

話しかけたい・・んだ。でも俺は、なんて言ったらいいのか、解らない。

それで、こんなストーキングみたいなことになってる。


・・一体、何話せばいいんだよ?ゆいちゃんは、おそらく、真面目だから、ゲームの話なんて出来ないし、だからって、俺は女の子の好きそうな話は全く出来ないし。どうすれば・・


「何してるの?」


「うわあ!」

ももる!いつの間に!


「・・あれ、蓮人さん?」

バレたっ!


「あれ、ももる?部活動遅くなるんじゃなかったの?」


「うん。予定は未定だったから、それより・・」


(じーっ・・)

やめろ!俺をそんな疑う様な目で見るな!違う、違うんだよ!


「蓮人さんと一緒に帰ってきたのね、ももる?」


「え?違うよ?蓮人君は今までゆいちゃんの、後ろ着いていってて・・」


(ももる、ちょっと・・!)

俺は腕を掴んで、電柱の陰に連れてく。


「なーに?」


「・・頼むからこの事は黙ってて・・」


「うん。えっと、このパンが食べたい」


ももるは、スマホを見せると、コンビニで売ってるパン。変わりにこれを買ってくれってことね・・。今回は負けたよ。


「ももる、どうしたの?」


「なんでもないよゆいちゃん。それより帰りにコンビニ寄ってこ?」


「え?私お金持ってないよ?」


「大丈夫、蓮人君がね」


「うん・・・俺が奢るから」


何故こうなった?


――――


ある日の放課後


「えーと、ここはこうなって?」


「違うってば、メル、逆!」


五戸ゆいちゃん、ももるに、勉強教えてる・・あれはしんどそう。


「なるほどー、徳川家康は、てんぷらが好きだったんだー」


「そんなことは、どうでもいいの!何年に何した?とか大事なんだから」


・・メンタルやられるな、あれは。俺はゆいちゃんが心配になって来る。


ももるに、いじられる大変さを、身に染みて知ってる俺。

同じ立場だから、気持ちが良く解る。


――後日帰りの電車で、ゆいちゃんと、たまたま一緒になる。


「こんにちは」


「蓮人さん、こんにちは」


いつものうるさいのが居ない。


「ももるは居ないんだね?」


「はい、そうですね」

敬語。礼儀正しいな。ももるとは大違いだ。そうだ、聞いてみよう。


「勉強、大変そうだね?」


「え、私ですか?」


「うん、ももるに教えるの、疲れるでしょ?見てても、大変そうだよ」


「そんなことないですよ?」


「え??」

なんで?めっちゃ苦労してるじゃん?


「いやいや・・ほんとは、違うんでしょ?ももるは、滅茶苦茶な事、平気で言うし、何言ってるか解んないからさ・・」


「全然違うと思いますけど・・?」


(なんだって!?)


「そう見えるかもしれませんが、意外と楽しいんですよ?飽きないし」


嘘だ!あれが楽しいだって?どうしたの?ゆいちゃん?真面目で良い子のはずなのに、こんなこと言うはずがない!


「ほ・・ほんとに?」


「はい」


う・・うあ―――。もう聞きたくない。


「あ、今日はガチャる日だった!急いで帰らなきゃ!」


俺は電車を、目的地前で降りて、現実逃避した。

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