第4.5話 真相と思惑



 リョウが部室を出ていくのを確認してからリカとアオはラケットと羽根を持って体育館に向かった。


 残されたアツシとマキさんは離れてソファーに座った。


「それでどうでした?」


 ここでいうそれとはリョウの覗き?のことだ。多少のイレギュラーはあったがおおむね予定通りいった。


「う~ん、微妙かな。」


 マキさんが苦笑いを浮かべながら答える。


「二人きりになりたいと言ってましたから協力はしましたけどまさか服着てないとは思いませんでしたよ。かなり勝負にでましたね。」

「これで少しはわたしのこと意識してくれるかなぁ……」


 俺の問にマキさんは恥ずかしそうに答えた。


(たぶん無理だろうな。)


 口には出さなかったがこの勝負はマキさんの負けだ。現場に居なかったこともあり詳細までは解らないが二人の話を聞く限りリョウは罪の意識の方が大きかったように見えた。


(やる気が空回りしてる感じがするな。)


 リョウには言ったことはないがアイツは変わっているというより異様だと俺は思っている。

 男なら女性と二人きりになれば少なからず異性として意識してしまうものだ。下心を抱いていてもおかしくはない。

 それに加え俺たちの回りにいる女性陣はかなりの高スペックだ。もちろん建前や自制といったものが働いたという可能性だって否定できない。


 でもアイツはそういった意識がまるでない。常に自然体と言えば聞こえはいいが普通の感覚が破綻しているようにも思えてしまう。


(だからってどうすることもできないんだよなぁ。)


「これからどうしたらいい?」


 黙って考え込んでいるとマキさんから今後の方針について聞かれた。


「もう回りくどいことしないでサクッと告って来てください。」


 考えることが面倒くさくなったわけではなくそれが一番勝率が高いと思ったからだ。


「ムリ!」

「どうしてです?」

「振られたら立ち直れないよ……」

「これだから処女は……」


 何度か恋愛を経験すればそういった駆け引きも少しは身に付くだろう。でもこの人の空回った行動を見ていると恋愛経験などないのだろう。


「なんで知ってるの!?」

「やってることが空回ってるからですよ。引くこともしないと。」

「そんなことしても追っかけてきてくれないよ!」

「でしょうね。」

「どうしようもないじゃん……」


 ソファーに寝っ転がり今にも泣きそうな顔をしているがこればっかりはしょうがない。


「もういっそのこと襲って既成事実にしてみては?」

「わたし痴女になっちゃうよ!処女に痴女に露出癖ってキャラ濃すぎでしょ!」

「それならリョウのことは諦めて下さい。」

「………ヤダ。」


 諦めろと言って諦められるならあんなことはしないだろう。


(リョウ君愛されてますよ~。)


 ここにいない友人にささやかながらエールを送った。


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