第10話「天才vs天才」

引き続き歴代最強のインクベーティスト松方志鳳の回想シーンとなります。本編は12話から再開しますm(__)m


開能高校BIG4の1人が中学1年生に敗れた事はすぐに学校中に広まった。


中学の同級生はみな志鳳しほうの強さに憧れ、誇らしく思った。


◆◆◆


1週間後 グラウンド


深津ふかつと志鳳が向かい合っている。


女子A「永平えいへい君頑張ってー!」


女子B「相手の子もかわいいけど、永平君に負けないでほしいな」


黄色声援が飛ぶ。深津ふかつ端整たんせいな顔立ちから女子人気が高く、授業を抜け出した女子達がギャラリーに混じっている。


深津「君、天才なんだって?」


深津が微笑みながらそう言った。


志鳳「いえ、自分なんてまだまだです。」

志鳳は下を向いてそう答えた。


深津「{この年で謙遜けんそんか、現状に満足しないのも、この子の強さなのかな…}」


先生「両者前へ!用意、始めっ!」


深津「僕は武器を使わしてもらうよ」


そう言うと深津はポケットからジッポを出した。


志鳳「{ライター?それが武器なのか}」


志鳳の思考をめぐらす間も無く、深津がジッポで火をつける。すると志鳳めがけて勢いよく炎が襲いかかった。


志鳳「{なんなんだ、炎が意思を持ってるかのようについてくる。}」


岩瀬いわせ「ノリ、この試合どう見んの?」


ギャラリーの岩瀬が隣の北別府に話しかける。


北別府きたべっぷ「まず深津永平が負けるのはイメージできん…あいつは俺達4人の中でもピカイチの天才だからな。恐らくあの志鳳ガキが勝つ確率は1%あるか無いかじゃないか」


岩瀬「まあ、そうだろうな〜。神様って奴はホント不平等だよな〜。天才にを持たせるなんて」


志鳳を追っていた炎は消え、再び深津がジッポで使う。

すると今度は炎が分岐して2方向で志鳳を襲いかかった。


志鳳{これを避けるのはキツい…、なら隙だらけの本体を叩くのみ!…うっっ!……毒ガス!?}


志鳳が深津に近づいた瞬間、急に目眩と頭痛に襲われ、大きく距離を取った。


深津は笑みを浮かべてこう言った。


深津「本当に天才だね。あの状況でよく息を吸い込まず下がったな」


深津のエボリティは「酸素さんそ」、空気中の酸素濃度を自在に操る事ができる。酸素濃度を上げて引火すると爆炎を作る事ができ、逆に下げると相手を窒息させる事ができる。

しかし、操作範囲によって、膨大な神経伝達物質エムピミンを消費する。


志鳳はこの時、毒ガス系の特殊能力エボリティによって目眩と頭痛が起きてると思っているが、急激きゅうげきな酸欠による症状である。

もしあの時、まともに息を吸い込んでいたら、気絶は免れなかった。


志鳳「{あの人に近づく時は息を止めないといけない、これは一気に肩をつけるしかないな}」


志鳳は大きく息を吸い込み、息を止めた後、全速力で間合いを詰めた。


深津「{もう攻略法を編み出したみたいだね、恐らくかなりの頭痛とか吐き気が襲ってるはずなのに…}」


志鳳がコンビネーションを決める。それを深津がなんとかカードする。


深津「{これ以上僕の耐久では受けきれない!仕掛けるのは今っ!}」


志鳳が息を吸おうと距離を取った瞬間、深津は自分の周りの酸素濃度を一気に上げた。


深津「最大出力…火円壁かえんへきっ!!」


深津を中心に高さ8m程の炎の壁が猛スピードで円形に広がって行く。


仁田「あいつっ!やりすぎじゃねぇの!?殺す気か?」


ギャラリーの誰しもが息を呑んだ。


志鳳「{逃げきれない!一か八か…}」


志鳳「最大出力…コア・バースト!!」


志鳳はありったけのエボリティを使い加速し、炎の壁に突っ込んだ。


炎の壁を突き抜けた志鳳は深津を間合いに捉えた。


深津「ははっ、参った」


志鳳が深津に殴りかかろうとした瞬間、深津は両手を上げてそう言った。


周囲が静まりかえる。


先生「しょ、勝負あり!勝者!松方志鳳っ!」


ギャラリー「うぉーーーー」


歓声と驚きの声に周囲が湧いた。


深津「神経伝達物質エムピミン切れちゃった。あの壁に突っ込んでくるなんて、君クレイジーだね」


志鳳は向かってくる炎の壁に全速力で突き破る事により、服はボロボロだが軽い火傷で済んだ。


岩瀬「次は俺かな?」


岩瀬が嬉しそうにそう言って去ろうとしたその時


北別府「いや、俺が行く」


仁田「まじかよ!」


岩瀬「大将が行かなくても俺で大丈夫だよ?」


北別府「いや次は俺だ!努力の前に天才は無力だと言うことを思い知らせてやる!」


BIG4を2人破った中学1年生と歴代最強のインクベーティストが対戦する事が学校中に広まり、その話題で連日持ちきりになった。


志鳳は高校デビューから2つ目の白星を上げた。

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