第9話「BIG4」

歴代最強のインクベーティスト松方志鳳の回想シーンとなります。本編は12話から再開しますm(__)m


◆◆◆


2058年6月(今から12年前) 松方志鳳まつかたしほう12歳の年


開能中学 グラウンド


エボリティ格闘術の授業中


中学生A「志鳳がれんと対戦するらしいぜ!」


中学生B「志鳳とやる時は勝つか負けるかじゃなくて何秒持つかだよな」


グラウンドの真ん中では2人の男の子が向かい合っており、その周りのギャラリー(同級生)が騒いでいる。


蓮「俺はその辺の奴らと違って結構強いぜ?」

この自身満々の少年、手塚てづかれんはエボリティ格闘術で現在無敗。全身を硬化こうかさせる「堅牢けんろう」のエボリティを持っている。


志鳳「楽しみだな」


志鳳は笑みを浮かべた。


先生「両者前へ、用意…始めっ!」


蓮「絶ってぇ勝つ」


蓮がそう言い放った瞬間、志鳳が蓮の懐に入り込んだ。


蓮「!?」


蓮は志鳳の動きを目で追うことが精一杯だった。

当然、「堅牢」のエボリティを使っている時間なんでない。


「ドスっ」


志鳳のボディブローが蓮のみぞおちに入り、鈍い音を上げた。

蓮がひざから崩れ落ちた。


先生「そこまで、勝者、松方志鳳」


生徒A「なんだよあいつ、口だけじゃねぇか(笑)」


生徒B「いや、蓮は強いよ?志鳳が規格外なだけさ!」


ギャラリーが感嘆の声を上げる。


その日の放課後、先生は志鳳を職員室へ呼び出した。


◆◆◆


職員室


先生「松方、今度から高校生のエボリティ格闘術に参加しないか?同じ年代の生徒じゃお前の為にも他の生徒の為にもならないと思うんだが」


志鳳も刺激のないエボリティ格闘術に辟易へきえきとしていた為、これに同意した。


志鳳「わかりました。行かせて下さい。」


先生「じゃあ来週からは高校3年生のクラスでやってもらう」


志鳳「いきなり最高学年ですか?」


先生「ああ、今の高校3年生は黄金時代と言われていてその中でもBIG4と呼ばれる岩瀬いわせ仁田にった深津ふかつ北別府きたべっぷは半端ない強さだから、色々教えて貰いなさい。お前は将来間違いなく国を守る優秀なインクベーティストになるんだ。先生達みんな期待してるぞ」


志鳳「わかりました。」


◆◆◆


数日後 開能高校 グラウンド


ギャラリー(高校生)に囲まれて、子供(志鳳)と大人(仁田)が向い合っている。


高校生A「あれが期待のルーキーか、まだ小学生か中学生か、わかんねぇくらいだな」


高校生B「いきなりBIG4と対戦なんて無理があるだろ、体格差も大人と子供だぜ」


志鳳は大人のインクベーティストを目の前に、少し緊張した顔だった。


対戦相手は仁田にった 源次げんじという185cm程の大柄おおがらの筋肉質の男だった。


高校生C「おいげん!怪我だけはさせんなよっ!」


野次と歓声が飛び交う中、2人は向かい合う。


志鳳{グラウンドが中学の2倍以上ある…広いな}


仁田「武器は使うのか?」

※高校からは自分のエボリティと相性のいい武器の使用が認められている。


志鳳「いえ、特に」


仁田「あっそう、じゃあ俺も使わないや」


ミスマッチ感に誰しもがお祭り感覚で2人を観戦する中、先生が合図を取る。


先生「両者前へ、用意、始めっ!!」


始めの合図と同時に志鳳は仁田の懐へ飛び出し両者は激しい打ち合いを始めた。


打ち合いの中、仁田のボディに志鳳の拳がめり込み、鈍い音がした。


仁田{うっ、このチビ、どっからこんな力が}


志鳳{さすが高校生、同学年なら今ので決まってた。なら攻め続けるまで!}


志鳳は少し前のめりになった仁田に高速胴回こうそくどうまわし回転蹴(かいてんげ)りをかますが腕でガードされる。


仁田{ガードしてる腕がいてぇ、今度はこっちの番}


仁田は志鳳が着地したと同時に掌底打ちをかまし、それを志鳳がすぐさまバックステップで避ける…が!


志鳳「…!ぐはっ!」


避けた攻撃が何故か志鳳の腹部を捉えた。


志鳳{彼のエボリティかっ!くそダメージがでかい、距離を取る}


先生「ギブアップする?」


志鳳「…まだやらせて下さい!」


先生「オーケー」


志鳳「{彼の腕が伸びた訳ではない、恐らく見えない何かを掌から飛ばした}」


ギャラリーの端っこ


岩瀬「この試合どっちが勝つと思う?」

岩瀬いわせ ようはBIG4の1人、知略を得意とする。


深津ふかつ「十中八九、源が勝つだろうね。スピードはルーキーの方が少し上回ってるようだけど、防御力と何より経験値に差があるからね、ノリはどう見る?」

深津ふかつ 永平えいへいは同じくBIG4の1人。小柄で甘いマスクながらも特殊なエボリティでどんな大柄の相手でも即KOする。


北別府きたべっぷ「源の奴、喰われるかもな…」

北別府きたべっぷ徳文のりふみはBIG4最強の男。

他の生徒と比較出来ないほどの筋肉量を持つ。

握力280kg、ベンチプレス380kg、100m9秒の怪物。

空手、柔道、総合格闘技、合気道等あらゆる格闘技に習得しており、歴代最強のインクベーティストと言われている。


仁田「そんなに遠ざかったら戦えないだろ?今度はこっちから行くぜ」


志鳳「はぁ、はぁ、はぁ…」


志鳳はお腹を抑えて下向いており、仁田の声にも無反応である。


仁田「{恐らく深手を負っている、その隙に軽く叩いて終了かな!}」


仁田は猛スピードで志鳳との距離を詰める。


仁田は下を向いてる無防備な志鳳の顔面めがけて掌底打ちをかます。


仁田「終わりっ!!」

仁田が掌低打ち《フィニッシュブロー》を打つ。


志鳳「{ここだっ!}…最大出力!!カウンター・コアッ!!」


掌低打ち《フィニッシュブロー》を放つ仁田を待っていたのは志鳳の最大出力を使ったクラスカウンターだった。仁田の巨体(きょたい)が地面に叩きつけられ、その威力は体が地面に埋め込まれる程だった。

仁田を含む志鳳以外の人間は一瞬何が起こったかわからなかった。


志鳳「はぁ、はぁ、はぁ、せ、先生!合図を…」


先生「し、勝負あり、勝者 松方志鳳!」


ギャラリー「うぉーーーーー」


先生の合図と共に、グラウンド内は大きな歓声と拍手が沸き起こった。


◆◆◆


数分後


深津「源、油断したね」


仁田「くそ、俺の完敗だ」


岩瀬「おそらく松方はお前の「空圧くうあつ」のエボリティに気付いていない。気付いていないからこそダメージが残ってるフリをして、お前が慢心している所を一撃で、しかも1番ダメージの大きいカウンターで仕留しとめるしかすべはなかった。全く大した奴だ!」


深津「来週は俺とあの子がやるよ。黄金世代BIG4の汚名は僕が返上する」


仁田「…すまん」


こうして志鳳の高校デビュー戦は白星でスタートした。

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