第28話

 さかのぼること3日前。とっておきの作戦について知子ちゃんから言及があったのは、セッションを終えて満足げな囁ちゃんを先に帰らせ、残ったゲームクラブ組で机を元に戻していたときだ。

『囁ちゃんを替え玉に?』

 僕はたまらずオウム返しに答えてしまった。

『部員であれば思考パターンから行動パターンまで部長に筒抜け……で・す・がっ! 部長と面識がないTRPG初心者のつーちゃんを混ぜれば、物語の展開から的確に違和感をとらえるなんてできませんっ!』

『自分が知りうるどのパターンにも当てはまらないんじゃ、とらえようがないもんな』

『ですので、微妙な違和感から嘘に気づかれる心配はナッシングですっ!』

 知子ちゃんのことだから、見切り発車のような思いつきで大見得を切ったんだろうと思っていたけど、ふたを開けてみれば存外しっかりした作戦だった。彼女の性格を知っていればこそ驚かされてしまう場面だったといえよう。

『さあ先輩! できる後輩をなでたり褒めたりねぎらったりしてくれてもいいんですよー?』

『知子ちゃん黙っててそこどいて。机、もう少し左だったわ』

『あっはい……』

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