ミドル Over the rainbow
ミドル1 虹の胎動
暁が、ふと眠れず目を覚ます。 時計は、3時45分を指していた。
ドア一枚隔てた向こうの葵を起こしたくはない。 部屋の照明をつけ、静かに、なるべく静かに着替えはじめる。
どのみち二度寝など出来る気分からは遠い。ベッドサイドに座って、ただ時間がすぎるのを待とうとしていた。
どおん、と音が轟く。 それとほぼ同時だろうか、耳元のインカムからコール音がする。
インカムをオンにして、連絡用端末に目をやると、画面は赤一色に覆われていた。
表示には、『生体パルス受信途絶 対象 水城 清 水城 葵』とある。
何がおきたか?考えるまもなくドアに駆け寄り、ノブを回すが、開かない。
葵と喧嘩をして、一日口を聞いてもらえなかった日以外『閉まっていたことのない」鍵が、かかっている。
「錬 応答しなさい! 錬!」
支部長、ネロ・ヴァンディエッタの声だ。ここまで緊迫した調子はいつぶりだろうか。
「今、寝室の確認をしていますが、鍵が…!」
合鍵で開いた隣室は、無人だった。 普段だらしない葵の部屋らしくもなく、ベッドも整えられ、無機質なまでに荷物も整頓されていた。
絶句していた暁に、通信機越しにネロの声が柔らかく響く
「…報告はいいわ。落ち着いて聞いてちょうだい。 彼女らの反応を追ってもらった結果、研究所のレネゲイトロン試験区画で最後のシグナルが出てうr」
それと同時に、どくん、と心音が響いた。いや、外から『心音のような音」が聞こえた
「支部長、今、レネゲイトロンの動作音が…」
葵が『仕事』をしている時の音だ。錬にとっても聞き馴染みが出来ていた。
咄嗟に駆け出そうとする暁を諌める声が一つ
「一人でどうするつもり? 支部で合流しなさい。…これは支部長命令でしてよ」
「了解。直ちに移動します」
「いいえ、きちんと準備をしてから来なさいな。一刻を争う事態こそ冷静に動く必要がありましてよ」
「…了解」
全てを見透かされている、そう思いながらも、呼吸を整えて暁は戦闘用の防弾ベストをクローゼットから取り出した。
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