第5話

次の日も俺の幸福感は消えていなかった。


小指サイズの指輪が現実だったことを示してくれている。


今日は教室までの階段を軽々しく登れた。



「おはよう、白羽」

「あぁ、おはよう!」

「…どうした?機嫌良いな!」

「ちょっとね!…あ」


カバンから机に移そうとした教科書が1冊バサッと落ちた。



その時、ちょうど通りかかった女子が拾って差し出してくれた。


「ありがとう!」

「…!白羽君、良いことでもあったの?いつもより全然明るく感じる!」

「え、そうかな?大したことじゃないよ」

「ニコニコ?にやにや顔?初めて見た〜」

「なになにー?白羽君がどうかしたのー?」

「あ、田中。白羽君なにか隠してる気がする!」

「さては彼女でも出来たか〜?どうなんだよ〜?」

「ち、違うよ!やめてくれ」

「あはは!顔真っ赤!何か可愛いね!」

「お前、いじられキャラだったんだな〜」

「そんなんじゃない!」...



久々に女子と話した、というか仲の良いやつ以外のクラスメイトとこんなに話した。


その様子を見ていたのか、今日はみんな声をかけてくれたりして何かクラスの一員って感じがした。



いじられキャラを目指していた訳じゃないけど、普通に接してくれば良かったな。そうすれば意外と笑われながらも青春の夢、すぐに叶ったのかな…



こんなことを考えるようになった。良い方向に踏み出せたのではないだろうか。


魔法とかではないけど、指輪が踏み出す威力を発揮したと感動した。



そして数日後、俺にとって思いもよらない事態が起こる。

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