第6話丑の刻〜ご〜

僕と零は神社によった足のまま早速沼御前のいる尾時公園にやって来ていた。

三善神社から徒歩15分圏内の所に尾時公園はある。

所謂、自然公園という公園で広大な敷地面積を誇る。

因みに先程、零が引き合いに出した彩乃屋に繋がる出口から出れば彩乃屋までは徒歩5分圏内という近さだ。

園内には平日の午後だからか、子供たちからお年寄りまで幅広い世代に賑わいをみせている。

小さな妖たちも草むらの中などで駆けずり回っている。

中には子供の足の間を通っている妖達もいてそのうち踏み潰されそうである。

この公園にも久しぶりに来たが、女子高校生の5人ぐらいのグループもちらほらとみかける。今どきの若者は放課後に自然公園に来るのか。

これが、ジェネレーションギャップというやつかな。

「相変わらずの人の多さ。うげー」

「しょうがないだろ、公園なんだから。いい加減、その人嫌いを直せ」

「それこそしょうがないでしょ」

好き嫌いなんて簡単に直せるもんじゃない。

零は不貞腐れる僕をおいて先程の仕返しとばかりにずんずん歩いて行ってしまう。

子供たちやご老人たちで賑わうエリアを抜け、木々が生い茂る道を進む。

今通っているこの林を抜けてすぐの所が沼御前の住む沼だ。

何か変だ。

道を進むにつれて何処か違和感を感じるようになってきた。

言いようのない不快感を抱く。

見たところ違和感を感じるようなものはないものはないのに不思議だ。

「何か前と変わってない?」

「何も変わってないと思うぞ。何でも1年も経ったら変わったように感じるだろ。」

「そういうものかな」

零の言葉に頷き1年も来ていないからかと結論づけようとするが違和感は拭えない。

もう一度注意深く周りを見ても、何処を向いても緑、緑、たまに黄緑や茶色。

多分、前に通った時と大体同じ風景なのに何かが変だ。

いや、変化はあったか。許容範囲内の些細な変化だけど。

ある一角の一部の草が少し燃えたみたいだった。

僅かに焦げたような黒が見えた。

その上に踏まれた跡もあるから誰か煙草でも吸って落としたのかもしれない。

あっやっぱり煙草の吸殻が草の間に落ちているのが見えた。

踏み潰されていない僅かなに部分にはブラックの文字が。

思い出せそうにないが、見覚えのある気がする。

まあいいや、どうでもいいけど、ちょっとした環境破壊だな。

しかし、こんなことで違和感を感じるなんて可笑しい。

そう考えると、やはり妖関係のものなのか……。

「おい、あれが沼か?」

思考の海に沈んでいた僕だったが零の声によって急激に現実に浮上させられる。

どうやら考え込んでいるうちに林を抜けていたらしい。大分近くに沼が見えてきた。

見えてきた沼は緑色の水面をしているが、不思議と汚さは感じさせないで端々には蓮が自生している。中央には小さな赤い橋がかかっている美しい沼。

ここが沼御前の住む沼だ。

「なんかこの光景見たら思い出した気がするわ。懐かしいもんだな。またここの池にくるとは思わなかった。よく池で遊んだよな〜。あれ、誰となんの遊びしたんだっけ?」

「僕とに決まってるでしょ。遊びは強いて言うなら泥遊びかな」

やっと少しは思い出したらしく感慨深かそうに言う零だが、肝心な所を覚えていないようだ。

遊んでいたのはもう10年以上昔なわけだから仕方ないのかもしれない。

橋の近くによれば雨風に晒されてきたせいで最後に見たときよりも柱の塗装が擦れてきているのが分かった。

零は橋の中間あたりに行くと手摺に身を乗り出すようにして池を覗き込見始めたので、僕も同じように覗き込むが、相当深いようで底を完全に伺うことは出来ない。

もしかしたらアレがいないかもしれないという期待を持っていたが覚えのある池から漂う気配を感じて見事にその期待は打ち砕かれた。

そう都合よく商店街で男でも引っ掛けて留守にしているとかいうのはないか。

「ちっ、やっぱりまだ居るか。いないなら顔を合わせない手段でも考えようと思ってたのに。」

目論見が外れたので舌打ちする。

沼御前と顔を合わせないなら事情をそこら辺にいる適当な妖に聴いてさっさと解決しようと考えていたのだがそうは上手くいかないか。

「本当にここにいんのか?姿が見えないけど。留守なんじゃないか」

「僕もいないと思いたいけどいるよ。しばらく合わないうちに知能指数が下がったんじゃない?人に見えないことに胡座をかいて普通に生活している妖も一定数いるけどけど潜んでいることだって往々にしてあるでしょ」

「た、確かにな。あまりにも世間に溶け込んでいる妖とか堂々と過ごしている奴らの相手することが多いからその考えを忘れてたわ」

気まずげに目をそらされつつ珍しく僕の言葉が肯定された。

やや辛辣な物言いすぎたかもしれないが、言っていることは割と正しいのだ。

昔も雪女や妖狐などを筆頭集落に住んで人の営みに溶け込んでいる妖もいたが、それ以上に現代の妖は社会に溶け込んで生活していることが多い。

口裂け女やのっぺらぼうなんかは種族本来の性質を捨ててまで普通の人間として生活する若い妖もいる。まあ、遊び感覚で休日に人間を驚かしている者もいるが。

その一方で姿を隠して静かに生活している妖もいる。

本来の習性に沿って生き、本懐を遂げるべく人間を驚かす為に息を潜めているのだ。

「そうでしょ。零は思い込みやすいところがあるよね。視野が狭いっていうか」

「そこまでいうか。お前こそ本当に調子に乗りやすいよな」

「えー、そんなことないと思うけど。零って決めたら一直線じゃん。もうちょっと柔軟な発想を持てばいいのに。僕のこと見習いなよ、発想の転換で色んな呪術具作ってる僕をさ」

「発想の転換を使って呪術具作ってることを自慢されてもな」

「えっ、呪術師からしたら一流の呪術師の証拠なんだけど」

零をからかっていたら衝撃の発言が。

呪術具つくるのって結構頭使って大変なんだよ?

呪術具を作る職人もいるものの呪術師界隈ではそれらを作れる呪術師は一流とされる。

零を一般人といってもいいのか分からないが一般人と呪術師には差異が大分あるようだね。

真っ当な陰陽師と呪術師の間柄も同様だ。

呪術師の常識は一般人や真っ当な陰陽師の非常識であるとは分かっていたけどここまでとは。

少なくとも僕が知っている中で陰陽師を名乗らないで呪術師を名乗る奴は僕ぐらいであり、名乗らなくとも呪術師など陰陽師でありながら呪術に手を染める変わり者なので当たり前かもしれない。

「ちょっと、あんたら私の事忘れてるんじゃないわよね!」

沼に来た理由などすっかり忘れて零との会話に没頭していると、突然背を向けていた沼から声が上がった。

反射的に振り向き沼の方へ視線をはしらせる。

沼は渦を巻き始めた。渦の中心で水飛沫を巻き込みながら水は徐々に人の形になっていく。

水面が大人しくなると同時に現れたのは水面に立つ如何にも人外という雰囲気を纏った美しい女だ。

この女性の正体がこの池に住む沼御前という妖であり、清姫という平安時代に名を馳せた由緒正しき?妖でもある。

傾国のなんとやらと言う美貌の持ち主だそうだが僕からしたらただ若作りなだけだな。

見てるだけなら面白い女妖なんだが、僕も零も昔からあまり得意ではない。

零に限っては沼の記憶が朧気だから沼御前のこともあまり覚えてないと思うけど。

そんな沼御前はその美貌を不機嫌そうに歪めている。

「ついに、現れたね。年増の若作りババア」

「あんた達、私の事忘れてたでしょ。話しかけてくるのずっと今か今かと見てたんだからね!」

「すみませんでした。沼御前さんでよろしいですか?」

「あら、零ちゃんじゃない。そうよ、私が日本国一の美女沼御前様よ」

「え、えっと。ほんとにお綺麗で」

「そんなお世辞わざわざ言わなくてもいいから」

沼御前に丁寧な口調で確認をとり、心にもないお世辞まで述べる零に口を挟む。

僕の言葉に零に話しかけられて嬉しそうにしていた沼御前の顔がまた歪んだ。

沼御前の冗談に零は明らかに困ってたし、僕は不快感を感じたからざまぁみろだね。

おばさんが美女を自称するのはいくら見た目が伴っていても痛すぎる。

それにしても、零への様子を見るに、

「男好きは相変わらずのようだね」

「あんたこそ相変わらずつくづく慇懃無礼な奴ね。随分とご無沙汰だったわね。あんたたち。零ちゃんを置いて陰陽師は帰りなさいよ」

「僕は陰陽師じゃない呪術師だよ。お前こそ池の中にこもってれば?」

先程から沼御前を邪険に扱っているのはそれなりのわけがある。

深く関わるのが面倒なのと反応が面白いという二点だ。

沼御前は無類の男好きであり、揶揄いやすいというのもある。

しょっちゅう人間に化けては男たちを誘惑している。

僕たちが住むこの町の磨波留都市伝説の1つ、カップルが池の前を通ると直ぐに別れるという話の根源は大方沼御前にある。いるだけで迷惑人物だ。

「相変わらず厚化粧だね。目の下のどうしたの?また懲りずに失恋かな?」

「はっ!失恋なんてしてないわよっ。失礼なやつね、今流行りの兎メイクよ。ああ、ヤダヤダ。流行に疎いダサ男なんて」

確かに目の下の当たりが不自然に赤い。見ようによっては泣き腫らしたように見えなくもないがうさぎメイクというのとも違うように見える。

前に見た白粉ベッタリの姿よりはまだマシなのかもしれないけど、

「それ、だいぶ前流行ったやつだと思うけど、しかも10代後半から20代の子がやるものでしょ。オバサンには似合わないよ」

「まだオバサンじゃないわ。ピチピチの20代を保っているのだから」

話しているうちに徐々に目がつり上がって機嫌が悪くなっていく沼御前。

それを鼻で笑ってあしらうと余計に火に油を注いでいるような状態になり面白い。

昔よくやったけどやっぱり楽しいかも。

「ピチピチって既に死後だよね、そういうとこがオバサンってね。」

沼御前に口喧嘩といえど僕の喧嘩の相手を務めるには役不足だったようだ。

すぐに閉口してしまった。つまらない。

十年ものブランクがあると口喧嘩のスキルも落ちてしまうのかな。

押し黙ってしまい無言の睨み合いといっても沼御前の一方的な睨みが始まる。

零は状況が飲み込めていないのかその様子を見て口をパクパクしている。

前世の屋敷、十六夜邸にいた餌を求めている鯉を思い出すな。1ヶ月もしないうちに全部死んじゃったんだけど。

やっと話に加わる準備が出来たのか零の口が音を紡ぎだす。

「えっと、随分と仲がよろしいようで。」

「「だれが!」」

酷い誤解を被った上に沼御前と言葉が被ってしまうなんて最悪だ。一瞬で気分が急降下した。

もう少し長い言葉で反応しろよ、沼御前。

「零ちゃん!覚えてないの?昔、よく二人で遊んだのよ」

スイスイと水をかき分けるように零の前に移動して、手を取ろうとする沼御前。

しかし、その手が触れる前に零のフードを引っ張って回避させる。

「ぐえ」

零がカエルが潰れたような声を出したが問題はないはず。

「そんなに強く引っ張ってないよ。どうせなら年増に触られるよりはマシだと感謝してほしいぐらいんだけど」

「窒息するかと思った」

大丈夫、呼吸が止まってから3分間ぐらい経たないと死なないから。

首を擦りながら馬鹿なことを呟いている零は放っておいて、

「年増ってなによ!」

「ついにボケ始めたんだから年増で充分でしょ。僕もいたから3人だよ?それに零に触らないでよ。汚れる」

「あんたは空気だったじゃない。意地が悪いのは変わらないわね!流石いやしい陰陽師だこと!」

「何度も言うけど僕は、呪術師だからね。確かに陰陽師は卑しい奴もいるけど、僕は、陰陽師じゃないから。あっ、分からないなら昔のように泥まみれにして教えこんでやろうか」

僕は陰陽師じゃなくて正真正銘の呪術師だ。

陰陽師だけではなく三流呪術師は卑しい者も多いかもしれないが僕は一流だから。

「あ〜〜〜!!」

零の大きな叫び声が辺りに響き渡り、零はビシッと人差し指を直線に伸ばし沼御前のことを指さした。

「いきなり叫び出してどうしたの」

「思い出したぞ。よく満に遊ばれてた人だろ。いやー、あんまり印象に残ってなかったし、そもそも素顔見たことあんま無かったから分かんなかったわ」

ようやく沼で遊んでいたことを思い出した零の言動に笑いを堪える。

本当に面白い。流石、僕の幼馴染だ。

印象がないとか素顔見たことがないとか。素顔を見ていないってことは泥姿しか覚えてないってことだよね。

でも今の発言には少し頂けないところがあるんだよね。

確認するすべはないが僕の顔は意地悪気に歪んでいることだろう。

「ふふ。零、僕が遊んでやっていたんだよ。暇つぶしにはなったけどこれっぽっちも楽しんでなかったからね。それに人じゃないよ。立派な人外だからねこの妖」

「そこじゃないわよっ。零ちゃん?印象に残ってないってどういうことかしら」

「零ちゃんっていう呼び方やめて欲しいです。姉さんと被るし。えーっと。なんか泥まみれになっていたことぐらいしか覚えてないんですよね」

沼御前は何やら不本意だったらしく零を問い詰める。

零的には開発中の術の実験をする僕の餌食になっていたことがかなり印象的だったらしい。

何回か水系の術で池の泥を被り沼御前は全身茶色に染められていた。

「え〜、零ちゃんっていいじゃない。フレンドリーで。あと泥まみれっていう変な記憶も消してくれていいのよ。ん〜。それにしても、本当にいい男になったわね。この黒髪も変わらずにいいわね。まさに日本男児って感じだわ」

話している間にもジリジリと零との距離を縮めていっている沼御前。

零は沼御前のうっとりとした様子にドン引いているので懲りずにまた零に近づこうとしていることに気が付いていない。

「ああもう、"零から半径三メートル以内に近づくな”!!」

その様子に痺れを切らして言霊を紡ぐと沼御前の体が後ろから何かに引っ張られたように飛んでいく。

なかなかに言い飛びっぷりだ。飛魚といい勝負にでもなるんではないかな。

「何すんのよっ。」

ぷりぷりという効果音がつきそうな様子で沼御前が怒りを表す。

気持ち悪いので怒るなら怒鳴ってほしい。そっちのがこっちのダメージが少なそうだ。

「うげぇ」

「あんたの嫌味な術も変わってないのね」

「僕の腕は何年経とうと何百年経とうと腕は落ちないよ」

「満はなんでそんな喧嘩腰なんだよ」

自称平和主義者の零が窘めてくる。

先程、僕が使ったのは言霊という一種の術だ。

例外を除き、本来は言葉に霊力を篭めることによって配下の式神や妖の行動を強制するものなのだが、僕が使う術は一寸違う。

配下でもなんでもない沼御前に僕の術が効いたのは一重に呪術の応用のお陰だ。

「何となく、帰国後すぐに駆り出されたからイラついてるとかはないから」

「なるほど、八つ当たりか」

「煩いな。で、沼御前は僕たちに頼み事があるんじゃないの。本題といこうじゃん。愉しくなさそうだったら嫌だから愉しそうに語ってね」

やっと本題に入れる。

十数年ぶりの再開だったからか戯れに多く時間をとられてしまった。

「楽しいかは分からないけど、私にとっては大事ね。この頃、1週間に1度ぐらいの頻度かしら。近くの森から変な声が夜な夜な聴こえてくるの。深夜だし夜は気味が悪くて、よく眠れないせいでお肌は荒れるし最悪だわ。あと、森には妖も人も恐ろしがって全然寄り付かなくなっちゃって。森に近づかなくなると人はこっちにも来ないし」

「妖が怖がるって……」

呆れたように呟く零。

確かに妖が怪奇現象を怖がるなんて笑止の沙汰のような感じもするが、意外にもこういうのに弱い妖は多い。力が弱い下級妖怪どもなら尚更だ。

なるほど。僕が林に違和感を感じたのは、どこにでもいるはずのものたちの気配がなかったからだったようだ。

「林での違和感は有象無象どものせいだったか。なるほど。でも酒を飲みすぎた酔っ払いが騒いでいるだけじゃない。有象無象どもはなんとでも説明がつくしね」

「絶対、あれは酔っ払いなんかじゃないわ」

「しつこいな。なんでそんなことが分かるんだよ」

きっぱりと否定する沼御前になげやりに返す。

さっさと酔っ払いに騒音の理由を押し付けて話を終わりにしたいのにそうはいかない。

僕の問いに沼御前が巫山戯た一言を。

「女の勘よ。」

「はい、撤収ー。零、解決したから彩乃屋で報酬のお菓子でも買って帰ろう。」

やっぱり無駄な時間を過ごしてしまった。時間は取り戻せないけどなるべく早く帰ろ。

完全に帰る気でいた僕を見て、このままじゃ埒が明かないと思った零が沼御前に救いの手を差し伸べる。

「俺はあんま覚えてないけど、昔世話になったんだろ。禍津日神様からの依頼なんだからしっかりやれよ。低級妖とかがいつまでも怯えてんの知ってて放っておくのもなんだか後味わりーし」

「れいちゃん」

感極まったように呟く沼御前を虫けらを見る時のように見る。

どうせ零は零で禍津日神の大事なお願いを遂行しようとしている意味合いが強いだけなのだろうが、昔世話になったという部分で沼御前は零が自分を想ってくれたのだと受け取ったようだ。

しかし、零の言葉は僕にも重要な事を思い出させた。

「あっそっか」

「ん?どうしたんだ?」

「本当に禍津日神を敬ってるなーと思ってね。それに、そうだった。禍津日神との約束があった。神との約束は果たさないといけないんだよね〜。だるいけどしょうがないから調べてあげるよ。その不思議な騒音の理由」

「ほんと!」

「やるからにはちゃんとやれよ」

感激してる沼御前を傍目に本当かと疑わしい目でみてくる零に軽く頷く。

僕からしても神との約束を破るのはなるべく行いたくない行為だ。

妖との約束もそうだが、神との約束は破ると力が強い分非常に大変なことになる。

五感や四肢の欠損で賄われるのはまだ軽い方で命を失うのは中ぐらい、もっと悲惨なこととなることもある。

過去に神との約束を一度破ったことがあったのだが、その時は4徹で走り回った。後始末を遂行した後はもう二度とコリゴリだと窶れた顔で潰れたものだ。

何も知らない人が聴いたらそれだけで済んで良かったんじゃないかと感想を抱くだろうが、4徹+体力の限界まで動くという犠牲はあくまで僕基準である。

普通の陰陽師であったら約束を反故にした代償を受け、何も出来ずに命を落としているだろう。

そんなことで神と約束し、沼御前と会って事情を聴いてしまった以上解決に乗り出さなくてはいけない。

「じゃあ、任せるわよ」

「ああ、任せてください。貴方の不安は俺たちが責任をもって解決させていただきます」

「零、やる気満々じゃん。折角だから僕も決めゼリフ言っておこうかな。

この呪術師芦屋満、蘆屋の名にかけて解決致しましょう」

紳士的に言い放った零を真似するようにニヒルな笑みを浮かべて、芝居がかった動きでお辞儀する。

常人がやったら滑稽な動きだろうが顔がいいのできまっていることだろう。

沼御前は安心したように微笑みながら頷く。


当たり前だ。前世で平安最凶の呪術師、蘆屋道満と恐れられた僕と記憶はないがその前世からの相棒である三善零清にかかれば解決不可能な問題などほぼないのだから。

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