何度でも君の為に[旅]をする

「——祐樹くん、逃げっ」

「花ッ!、、!!」


目の前で、花の身体が二つに裂ける。

飛び散る血液は赤く、赤く…。

妙に生暖かいソレを浴びた俺は、


♦︎♦︎♦︎


「——花ッ!、、!!…あれ、ここは…ああ、またか……」


最近はずっとこうだ。

幼馴染みの花が目の前で死ぬ、そして驚いて目を覚ます。


「クソ、夢だとしても、もっといい夢ねぇのかよ…」


一人愚痴を呟いていると、携帯のアラームが鳴る。

八月二十日、今日は花との約束がある。

まあ、隣街に遊びに行くだけだが。


「あっやべ、もうこんな時間か」


急いで身なりを整える。

今回は動きやすい格好にしよう。



待ち合わせ場所の公園に行くと、花がボンヤリとベンチに座っているのが見えた。

遅れたのは初めてだ、怒られるかな…。


「すまん!待たせたな」

「ううん、大丈夫だよ、祐樹くん」


そう言って朗らかに微笑む花。

うーん、守りたい、この笑顔。


「じゃあ、もう行くか」

「うんっ!」


そう言って花に手を伸ばす。

しかし、その手が掴まれる事はなかった。



公園の柵を壊して突っ込んできたトラックに、花は轢き潰された。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



「———!!、くそ、そんなのありかよ…」


最近はずっとこうだ。

幼馴染みの花が目の前で死ぬ、そして驚いて目を覚ます。

携帯のアラームを止める。

八月二十日、今日は花との約束がある日だ。


もう何度目だろうか、俺は着替えて家を飛び出す。

先に公園に行き、花を待つ。


「おう、花!おはよう」

「あれっ、祐樹くん、早いね」

「まあな、ちょっと早く目が覚めたんだ。それよりもう行くか?」

「うーん、そうだね、わかった!」


嬉しそうな花は、ニッコリと微笑んだ。

か、かわいい…。


バスに乗って隣街へ。

そこそこ大きな映画館の前で降りた俺たちは、とりあえず話し合うことにした。


「どうする?服屋に行きたいんだっけ」

「うん、この間破れちゃって、どうにもならなかったから…」

「そりゃあ大変だ。んーとりあえずそこから行くか。ほかに思いつかないし」


二人で肩を並べて歩く。

逸れないように、しっかりと手を握って。


「キャーーッ!!!」


それが間違いだったのか。

近くで起きた悲鳴に咄嗟に動けなかった。



覆面の男のナイフが目の前を通過する。

そして、花の首を掻き切った。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎…………



「——、花ッ…」



最近はずっとこうだ。

幼馴染みの花が目の前で死ぬ、そして驚いて目を覚ます。

煩い携帯を放り投げる。


「また、守れなかった…」


俺は失敗した、だからこそ、俺が花を守る。

そう心に言い聞かせ、家を出る。


八月二十日、今日は花との約束がある日だ。

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作者人狼 志風 @atmark_maruA

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