第20話 テスト 後編

 「何と…!あれほどのキマイラはただ一瞬で!」

 「驚きはまだ早いよ!彼女はもう私たちを越えるよ!」

 「ミリア!次からは本番だよ!!」


 今回は何も出ないの?それは… ステルスよね?!

 「それじゃ、今回は君の出番だ。レミエル!」

 

 手で剣の柄を握って、構えを出す。目を閉じる。

 「… 8匹、いや違い、10匹だ!」

 急に目を開け、鞘の中から剣を振るえる。

 「一閃!!!」

 何もないはずところから青色な血が噴き出し、キマイラの死体が現した。


 「あれが『居合』と『心眼』だ!こんな技はまだ教えないはず…!」

 「違うよ。見た目が同じだが。それは『魔力放出』と『魔力探知』の組合いよ!まったく、彼女はとんでもない戦い方を創ったよ」

 「しかし、ミリアの力なら、一撃であんなモンスターを倒すなんて、信じられん!」

 「その剣の周り、何が附いている…」

 「オホホホー、気ついたか。その剣のことを聞く時、わしもビックリした。さすが、こんな発想、たぶんは誰でも出来ないな」

 「フェロード、あの剣は一体?」

 「それは、魔法アイテムとオリハルコンで作られたものだ。剣に魔法を付けれそうだ。このお二人さんがオリハルコンを持ち来た時、本当にビックリした。こんな幻素材が本当に存在するなんで…」

 「いええ。大したことではない。ミリア様の命令だから」

 「そう。そんな下手なモンスター。私は一撃で倒した!」


 「今回は… ホオ~ いよいよ本番だよね! いいよ!こっちのウォーミングアップもそろそろ終わりしよう!」

 今回の魔法陣から、20匹以上のキマイラが現す。谷の中に、キマイラだらけだ。

 「アレ!後ろもいるの?浮遊魔法で空に飛ぶ?それは遅すぎ!アレを試しましょう!それじゃ、一気にまとめてやっつけよう!」

 まず、地面に向かって、魔力を集中するよ!

 「ファイアストーム!」

 炎の爆風で、地面が火の海になる。爆風ぼうふうの反動力で一気に空に飛んだ。

 「よし!成功だ!今は浮遊魔法で止める!」

 谷の上空から下を見る。キマイラたちが可哀想ね。一気に楽にしてあげるよ!

 「残る半分くらいかな?じゃ、そろそろこっちの本番だよ!メテオインパクト・改!」

 両手を高くあげて、無数の隕石を呼び寄せ、地面に激突した。


 「あれは!!エンシェント魔法の『メテオインパクト』じゃないか!?なぜミリアはそこまでの魔法も使える!?」

 「違うよ、それは『改』よ。彼女が『メテオインパクト』の原理で創ったオリジナル魔法よ。ほら、エンシェント魔法の魔法陣が出ないよね。そして、詠唱もない」

 「これは、一体どうやって?」

 「組合原理が私さえ分からない。彼女によると、『ファイアボール』と『グラビティ』の融合魔法よ」

 「何たる不思議な子だ!!」

 

 谷にいるキマイラの死体とキモイ青色の血も一緒に消えた。そうよね、ここは仮想空間よね。

 また新しいキマイラを召喚された。今回は先よりちょっと多い?

 「へいいい!真ん中の奴、他より大きいね!そろそろ君の出番よ!」

 

 マントの裏側から、右三本目のナイフを出して、真ん中のでっかいキマイラを狙い。

 「身体強化!」

 魔力を力に変わって、全身の力でそのキマイラに投げる。

 ナイフがキマイラに当たる瞬間。地面に大型魔法陣が現す。大地が揺れ、地面が沈下している。さらに、地面から無数な岩石を隆起し、キマイラに攻撃した。谷底にキマイラの遠吠えが満ちている。

 

 「アレを見たか!?」

 「あぁ、あの魔法陣は『グランドフォール』だ!!なぜ無詠唱で!そして、そのナイフは?フェロード?」

 「わしも驚いた!あの小さいナイフにあれほどの魔力を注ぎ込むなんで!!」


 「ええと、今までは何匹倒したの?これが最後かな?あれを使いましょう!」

 地面に戻って、地面に刺すナイフを拾い、マントの裏側に収める。

 レミエルが鞘から抜き出し、その上の光属性を消す。その時、また山ほどのキマイラが現す。

 「せっかくアレを使いたいのに、ちゃんと空気を読めるよ!シャイニングバリアー!」

 傍に召喚された二匹がバリアーの範囲に入った。瞬間に消えた。

 「残念、わたくしのバリアーに、勝手に入ると、すぐ死ぬよ!これで、詠唱準備~」

 

 「ミリア様使ったのは君のスキルではないか?」

 「同じですが。レベルの差が大きい。ミリア様のバリアーの範囲は、私の五倍以上だ。さらに、威力も遥かの上だ」

 

 キマイラたちがバリアーの外で、あらゆる攻撃をする。しかし、爪の攻撃とか、体当たりとか、そして、口からのファイアとビーム。バリアーの前に、すべてが無効になる。それじゃ、バリアーが時間切れまでに、詠唱しよう。

 「世界を導き偉大なる光の創造神よ!この世の邪悪なるものに審判を下せよう!今こそ、神の裁きを… ジャッジメントサンダー!」

 

 曇り空に太陽が現す。輝いている光のなかから、裁きのサンダーが地上に落ちる。剣を空に上げる。空から落ちったサンダーを剣に纏う。剣が雷の魔力を吸収して、空に届くように巨大化した。

 「お待たせ!これで終わり!」

 バリアーが消えた瞬間、剣を横に構え、前方に振るえる。

 「ジャッジメントサンダー・一閃!!!」

 一撃ですべてのキマイラを真っ二つになる。

 

 「あれは!アレはなんだ!ただ一撃で、あのキマイラの軍勢を!」

 「あれは… エンシェント魔法『ジャッジメントサンダー』よ。超強力な光属性の攻撃魔法だが。範囲は狭いという欠点がある。しかし、彼女は剣で魔法を吸収し、広範囲攻撃になる。その剣の特性はともかく、彼女は本当に天才よ!」

 「さすがわしの孫娘だ!しかし、最後のアレ、ミリアが大丈夫か?」

 「あぁ、あれか、彼女にとって、一番簡単だよ」

 

 「これで終わり!この煙は…!」

 谷底に、黒い煙が蔓延する。何か出る!

 「またキマイラか… これが本当に最後なの? イヤ、待って、こいつらはおかしい!何よ? アレが… アンデッド!」

 煙から5匹のキマイラが現す。そのキマイラはすでに腐乱した。黒色の体、そしてその赤い目… 間違いない、キマイラのアンデッドよ!

 「これがアンデッドなの、初めて見た!残念、わたくしの聖属性は非常識だよ!ターンアンデッド!」

 アンデッドの周りに穏やかな光を展開させて、すべてを浄化した。


 「アレはなんだ?あの時、レオーナが上級浄化魔法でもかなり時間をかかる。ミリアは初級魔法で五体のアンデッドを全部浄化する!」

 「だから、先は言った。彼女にとって、一番簡単だよ。彼女の聖属性は200万を超えるよ…」

 「200万だとう!!!」

 「話はここまでだ!彼女もう帰るよ」


 「シャローナ先生!100匹キマイラ、討伐完了!」

 「あぁ、お疲れ。テストは合格よ!本当に強くなったね」

 「アハハ!さすがわしの孫娘だ!おめでとう!」

 「ミリアちゃん、わしは感服するぞ!あんなの数のキマイラを簡単で倒すなんで!」

 「おめでとうございます。ミリア様」

 「おめでとうございます!ミリア様!」

 「ありがとうございました!皆さんのおかげで、やっと…!」

 「それじゃ、そろそろ帰るよ。この空間は長く維持できないよ」

 「はい!シャローナ先生!」

 

 先生と魔法を勉強から5年間を経つ。やっと強くなった。これで、お兄様との約定… 長年の願い… もうすぐ叶うよ!


 「では!ミリアの合格に!おめでとう!」

 その日の夜、私の合格を祝いため、シャローナ先生の家で打ち上げをする。

 「ミリア!さ、カンパイの挨拶をお任せ!」

 「えいいい!わたくし、無理よ!」

 「今日の主役は君だ!照れないでよ!挨拶を!」

 「わかりました。皆さん。今日はわたくしのテストため、皆さんがわざわざここに集まること、本当に感謝します。カンパイ!」

 「カンパイ!」

 「そして、わたくしはここに、皆さんに感謝の気持ちを伝えたいです!」


 今まで支える人たちの顔を見て、膝がガクガクしている。唾を飲み込んで、感激の気持ちが溢れている。

 「シャローナ先生!先生からいろいろな魔法を学ぶ上、今日の結果が出ました。本当にありがとうございました!」

 「おじいさま!剣術を教えること。そして、あの時を救いこと!ありがとうございました!フェロードさん!わたくしのムリヤリな願うことを叶い、こんないい装備を造ること。ありがとうございました!」

 「ワァイス!シッヴァルツ!あの時から、わたくしがモンスターから救い、地下迷宮から脱出。そして、今までをわたくしを支えること。本当にありがとうございました!」

 

 皆の顔に微笑みが浮かっている。

 「あの時のわがまま姫… 本当に、大人になったな…」

 「ミリア様、これは私たちやるべきことだから。感謝は…!ミリア様!」

 私はワァイスの手を握り締める。

 「そんなことばはいらない。ワァイスはわたくしの友達だ!」

 「ミ…ミリア様!わ…私は…!」

 ワァイスが無意識にうめき声を出す、真っ黒の瞳から涙を流した。

 「こんな私を友達に… ミリア様!」


 私はビックリした。ワァイスはいつも表情が少なかった。やはり、ずっと本当の気持ちを隠すよね?

 ワァイスの頭を撫でる。

 「泣かないで… 今日は楽しい日だ。笑って… ほら、これで涙を拭いて」

 ワァイスがハンカチを受け取り、涙を拭く。顔が真っ赤になる。

 「ミリア様… これは嬉しい涙だもの…」

 また戻の無表情メードに戻る。

 

 「うっく…」

 シッヴァルツが喉からうなり声を上げ、不満げな音を出した。

 これは、嫉妬なの!?まさか撫でられ欲しいの!?ムリよ!人の前に、若い少女が落ち着ける執事を撫でるなんて!そんな恥ずかしことが無理よ!

 

 「シッヴァルツ。ミリア様に何か不満があるか?!」

 ワァイスが怖い顔を出した!!

 「いええ、違う。私は、たた…」

 ごめん… シッヴァルツ。今夜が猫に戻って、抱いて一緒に寝よう。


 「そういえば、ミリア、これからはどうつもりか?」

 「先生、どうつもりとは…?」

 「あなたはもう卒業よ。何かやりたいことがあるか?」

 

 そうよね。やりたいこと。いええ、やるべきことがある。国の皆がまた私を待っているよ。

 「わたくしは、インスシュレターに帰ります。そして、帝国と異教を国から追い払います!」

 「そのことは、まだ無理だ!」

 「おじいさま!どうして!なんでダメですの!?」

 「今は万全の準備を備えない。今の王都の周囲、帝国の犬がいる。あなたを生きることを知ったら、すぐ進軍の可能性が高い!せめて二年… イヤ、三年の準備が必要だ」

 「そんな…!」

 

 私の胸が締め付けられ、息苦しくなる。これが、失望の感じよね?でも、三年後、必ず長年の願望を叶う!

 「わかりました…」



 深夜になる、おじいさまとフェロードさんは相変わらず酔っぱらった。私は部屋の外の階段で座って、頭がクラクラする。

 また三年よね… これからは何をする。冒険者になる?それとも、ここで魔法をより一層精進する?

 

 「やはり、あんたはここに…」

 後ろから先生の声をかけられた。

 「はい、シャローナ先生…」

 「また帝国のこと… 気にする?」

 「いええ… それはもう大丈夫よ。あの、先生… わたくし、これから、何をすればいいの?」

 「やはり、このことよね」

 「はい、今まで、わたくしの頭の中に、帝国と異教を追い払うこと以外、何も考えなかった…」

 「それじゃ、聖王国の魔法学園はどう? リチャードはもう何度も招いたよ!」

 「魔法学園なの?」

 「そうよ。聖王国の王都、テンプルムに建っているインカンタートル魔法学園よ。魔法知識を学ぶ場所だ。学生がほぼ君の同い年よ」

 

 

 魔法学園かな?魔法を更なる研究?それは確かにいい選択肢… そして、同い年よね…

 「いいよ!シャローナ先生。決めるよ、インカンタートル魔法学園に行く!」

 「それはいいよ。来週を出発するよ。私もね~」

 「へいい!!先生も!!?」

 「私はこう見えても、インカンタートル魔法学園の名誉教授だよ!」

 

 そうか!また先生と一緒よね。学園生活か、これからの三年間、何が待っているかな!わくわくするよ!

 「では、先生、これからの三年間、まだよろしくお願いします!では、お休みなさい」

 

 「ね、シッヴァルツ!早く猫に戻るよ!一緒に寝るよ!」

 「ミリア様、な… 何をおっしゃると!?」

 「いらないの?なら大丈夫!」

 「是非!そうさせていただきます!」

 「このエロ猫。私も一緒… ミリア様を守る」

 「ワァイスも一緒よ!それじゃ、皆さん、お休み!」

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