第6話 命の火…消える

医者の予測を大いに裏切って余命宣告から6ヶ月を過ぎた辺りで、セイコの元気が無くなってきた。


身体の痛みも酷いらしくて、彼女の背中を擦る時も触っちゃイケナイ……痛い場所が日に日に増えてるみたいだ。


痛みが酷くて薬に頼るようになると、彼女の意識もハッキリしない時間が増えてくる。


一日のうちで意識のハッキリしている数時間には『好きだ』とか『愛してる』とかの言葉を連発して、俺が彼女を どんなに深く愛しているかを力説する。


最初は喜んでいたセイコもマンネリに成ってくるとツッコミを入れてくる。

「本当にセイコの事が好きなの? 言葉で言ってるだけじゃないの? 本当は『浮気』してたりして……。」


そんな憎まれ口を言う彼女が焦れったくて腹を立てる俺も、『本当に?』『そうなんだ…… 』と反応が弱々しく成ってくると、強気な以前の彼女の姿が貴重に思えてくる。


「ああ、ミッくんとエッチしたいわ。」

身体の痛みに必死に耐えている彼女が、時々冗談ぽく言うのだが……

彼女の痛みを考えると、《無理だろ!》と思ってしまう。


命の火が消える3日前に体調が良い日が有って、彼女に懇願されて……敏感な部分を触ってやった。


医者からは「もう いつ旅立っても可笑しくない状態です。」と言われて、家族や親族が見舞いに来るなか、

「10分ほど二人にして……。」

息も絶え絶えに言うセイコの言葉に従い、

ご両親が席を空けてくれた。


「ミッくん……ありがとね……貴方に愛されてセイコは幸せでした。 でもセイコが死んだら新しい彼女を迎えてね、ミッくんが幸せに成る事がセイコの最期の願いだから……。 キスして……。」


そして二人は長いキスをした。


今度は彼女が両親に感謝の言葉を述べた。

そして、

「ミッくんはセイコが死んだら新しい彼女を作って貰うからね。 それがセイコの願いだからね。」

そう付け加えた。


その夜に彼女は天国に旅立った。


息を引き取る直前に、セイコの表情が緩んだ。

俺は天使のお迎えが来た事を悟った。


☆☆☆☆☆ おしまい ☆☆☆☆☆☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

セイコへ…… 遠野 彬 @miyakeakio5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る