第5話 病状…悪化

俺は懸命にセイコの看病をした。


何度も彼女の手を握って、神に慈悲を乞うた。


「夫婦だからミッくんには言うね。 お医者さんが偶然話しているのを聞いたんだ。 セイコの命は持って あと2ヶ月なんだって。 悪性のリンパ腫がワルさ してるらしい。」


「それ……セイコの事じゃ無いね。 顔色だって良いし、セイコにはミッくんっていう応援団が居るんだからさ。」


「私も、そうだったら良いなって……いつも思ってる。 だって、このままセイコが死んじゃったら、残されたミッくんが可哀想……。」


「昔から『一病息災』って言って、健康な人より病気がちな人のほうが長生きするらしいし。」


「『美人短命』っていう訳でも無いだろうし、ミッくんを残してお姉さんは、まだまだ死ねないわ。」


「まあ、そんなに美人じゃ無いしな。 大丈夫じゃないか?」


「ソコ? 論点がズレてますよ、お兄さん。」


病室に二人の笑い声が満ちた。


そうして よく笑う事が良かったのか……当初2ヶ月と言われていた、セイコの命の火は、4ヶ月を過ぎても消えなかった。


「………奇跡ですね。 ほら、よく見舞いに来る男の子の お陰かも知れない。」


そんな事を医者が言うものだから、彼女の両親から大いに感謝され、

「もしも奇跡が起きて、セイコが元気に成ったら……娘と結婚して貰えないだろうか?」と言わしめた。


その事をセイコに言うと……

「私達、もう式を済ませたんだもんね。 あとは初夜を迎えるばかりかな……。」


すると彼女は急に赤く成って、

「私ったら……何言ってるんだろ!」


「俺もセイコと初夜を迎えたいよ。」

そう言うと、

「だいたい男の子の頭の中はエッチな事ばかり考えてるんですって。 それに対して女の子はムードを重視するの。 私を その気にするまで……当分お預けね。」


話の流れでは、笑う処でも無いんだろうけど、二人は笑った。

「ケチ!」

俺が そう言ったもんだから、彼女は……

「やだね……減るもん。」


「じゃあ先っぽだけ……!」

そう言ったもんだから、俺はセイコに頬をひっぱられて叱られた。

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