140.逃避行三
「そうですね。歩く分には問題ないかと思いますが……それ以外のところは、腕が治るまでに色々と不自由はしそうな気はしますね。」
そう言って
「痛た……とまあ、利き腕がこんな有様ですからね。食べるのも、体を洗うのも、用を足すのにも苦労しそうですよ。」
冗談めかして
「なるほどなるほど、それでしたら風呂に入る時には私が
何とも嬉しそうに
「えぇ……、
「なにをなにを……いやはや……
「信じられませんよ。大体、肝心なことに返事してませんよね。変なところに触るかってところをさわるかどうかって……。」
「それは何と言いますか……。」
実際図星だったのか、歩いていた足を僅かに依れさせると、
不意とその瞬間、視線の先に木の枝があることに気が付いて、
綺麗な曲線を描いてまん丸に小さな実には片方の側面に一本の長い窪みが出来ていて、どうやら
「
そう
「まあ、ずっと歩いてきましたから、ずいぶん減ってますけど、なにか食べるものでもあるんですか?」
「ここに
言いながら
「その小刀。まだ残ってたんですね。全部投げたのかと思ってました。」
ひょいっと
「この刃の長さが使いやすそうでしたからね。一本使わずに残しておこうと思ったんですよ。」
言いながら
「はい。
すいっと口元まで
「なんですか。それぐらい自分一人で食べれますよ。」
「まあまあ、
にこにこと笑みを浮かべて、ずいっと実を差し出してくる
「ん……甘いですね。」
口内で果実を転がしながら、
どこか果実に若いところが残っているのか、酸味のある甘さがして、口内がさっぱりとするような心持になる。
「ふむ、確かに甘くて美味しいですね。もう二三個取っておけば良かったでしょうか。」
通り過ぎてしまった木枝へと顔を振り返らせながら、物足りなさそうに
「それで、
「差しあたっては、先程も言うた通り遠くへ。それからは――」
僅かに
「それからは?」
「そうですね。
「はあ、私の里ですか……えっ?私の里ですか!?」
思わずも驚いて
「私の里って、私の里ですか?」
余りにも驚いてしまったのか、
不意に
「ええ。
「どうかしましたかって、どうして私の里って……そこがどういう所だか分かっていて言ってるんですか?」
「さあて、どういう所だと言うのです?」
すっ呆けたような物の言い方をして、
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