137.顛末四
訝しんだ顔で
「それが今、みんなで慌ただしくしている理由ですよ。実は、その寺に居た方々が命を狙ってたと言う成瀬様の屋敷が、昨夜何者かの襲撃を受けまして。成瀬重里様ご本人が命を落とされたらしいんです。」
その言葉に
「ああ!?じゃあ、まさか、その
話の筋からすれば、それが一番考えられることだ。
だがそれを
「いや、捕えた男に検分させたが、暗殺に来た男どもの人数は斬られた男どもの死体で丁度らしい。それはない。」
「はぁ……?つまり?どういうことだ?」
「えっと……それが……。」
「成瀬様の屋敷を襲ったのは、一人だったらしいんです。」
「はぁ!?一人!?」
成瀬家と言えば、この地域で最も家格の高い家の一つと言って良い。当然ながら家も大きければ、そこに奉公している人の数も増える。武家であるのだから、それなりに戦える人数も多いだろう。それが一人に襲われて家主が死んだというのは信じがたかった。
「ちょっ、ちょっと待ってください。本当に一人ですか?」
「ええ、生き残った家人に話を聞いたところによると、その
「なあ……?そりゃ……。」
一層に
その特徴的な顔を
しかし、それが事実だとすれば、
「いや、そりゃちょっとおかしかないですか?どういうことです、それが本当なら、あの
「話を聞く限りは、そういうことになりますね……。普通なら有り得ない話ですが。」
言いながら、
「んな馬鹿な……。いや、どういう……。」
そうして、ふと
「あ……、だが、それだと話がおかしくないような。寺に居た奴らがご家老の命を狙ってたっていうんなら、それを斬り殺した女が、なんで助けたはずのご家老の屋敷を襲うなんてことになるんっすか?」
「それが分からないから困ってるんです。一体どうやって事が進めば、そんなことになるのか……?ぜんぜん分からないんです……。」
「家老を狙う暗殺者を寺で斬り殺して、うちの組とやりあって崖から落ちて、んで、最後には屋敷を襲って家老を殺した……。それが昨日一日に起きた出来事だっていうんですか。」
そこに居る人間にとってみれば、
「さしあたって、隊員の方々に
「そうするしかないでしょうね。」
殆ど顔を動かせないながらも、
結局のところ本当のことは、当の本人に聞くより知るすべはないであろうし、藩の家老の屋敷を襲ったと言うことが本当ならば、一族郎党を皆殺しにせねばならぬほどの大罪であった。どうやっても捕まえなければならない。恐らくは
ただ、それも心に引っかかってはいたが、何か妙なことが気にかかって、心がわだかまりを抱えているような気持ち悪さがあった。
何かを聞き逃している気がする。
端目に眺めていた
「そう言えば局長、さっき生き残ったって言いましたか?」
「え?何のことです?」
「いや、屋敷を襲った犯人の容姿は生き残った家人に聞いたって。」
問われて
「あ、はい。生き残った人に話を聞きました。」
「生き残ったって、どう言うことっすか……?ご家老が死んだだけなら、普通そんな言い方しませんよね。」
ああっ、と声を上げて、
「昨夜、成瀬様の屋敷が襲われた、さっき話しましたよね。」
「その結果として、成瀬様の屋敷に住まわれていた方々の、その殆どが斬り殺されていました。」
「なっ……はあ……?」
何度目か分からぬ、間の抜けた声を
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