135.顛末二
「がっ!?いてえっ!!」
背骨の中心として指の先から頭の髪の毛の先までの
「あ!
痛みで思わず男が上げた叫び声に気が付いたようにして、寝そべっていた布団の近くから声が掛けられた。
その声は男にとって耳馴染みのあるものであり、激痛に苦しみながらも、聞き違えることの無い特徴的な幼い響きがあった。
未だ
ただ幼い少女が酷く悲痛な表情を浮かべていたと言う事実に、
「おう、起きたか
遠くから低く渋い声が響いて来たかと思うと、
つるりとまんまるとした頭に、厚ぼったい唇は一目に蛸を思わせる、背丈の高い男であった。
禿げ男はわざとらしく自らの頭をぺしぺしと叩くと、片眉を上げて憎たらしい顔を見せながら言葉をつづける。
「憎まれ者は世に
「うるせえ、
か細い声を絞り出すようにして
「俺が生きてちゃ、困るか?前に貸した酒代返してもらってねえからな。」
「いや、お前が生きてたおかげで幾分か儲かったからな。俺としては嬉しい限りだ。」
そう言って
恐らくは
「
「こういう時の賭けってのはな。願掛けみたいなもんだ。おかげで助かっただろう。俺は賭け運があるからな。」
ちっと
「てめえが勝ったってことは、死ぬ方に賭けた奴もいるはずだな。」
眼球しか動かせない状態で、
「そりゃあな、だが恨むなよ。俺達のような者の生き方ってのはそういうもんだろいつ自分が死ぬか分からぬから、身内の生き死にも余興の一つだとでも思ってないとやってられんもんだ。」
「恨んじゃねえよ。ただ、誰が賭けやがったかなとだけ思ってな……。」
渋々気に言いながら
「がぁ!いてええっ……!!」
顔を歪ませながら、
「これは……、俺は一体……。」
痛みに
「
「全く持ってな。一日で気を取り直したのが信じられないくらいだ。」
傍らで
「崖から……?」
言われてようやく
日の暮れて暗くなった時分、朽ち果てかけた寺の裏手、隊で追い立てて切り立った崖にまで追い込んだあの時だった。
目の下に黒子のある女に胸倉を引っ張り込まれ、高い崖から飛び降りた、その瞬間の光景が脳裏に蘇ってくる。
宙を舞って、加速しながら森の中へと飛び込んでいく瞬間の感覚が再び襲ってきて、思わず
「おああああ!!あの女!!クソッ!!」
やにわに
「いってえええ!!!糞があ!」
「おうおう、何とも元気なもんだな。死にかけていたとは思えねえな。ま、この様子なら、もう大丈夫だろ。死ぬことはあるまい。」
からからと笑う
僅かに耳に煩わしいその声を聴きながら、全身の痛みが治まってくるのを感じて、
「局長。」
「なんですか?」
「あの女はどうなったんですか?俺と一緒に落ちたんでしょう?」
「
僅かに言い淀んで、何故か
「名前は憶えてねえっすけど……。捕まえているんですよね?」
「それが……。」
言葉を詰まらせると、
何か言いにくそうにしているようで、その表情に
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