126.緊縛の女囚四
何が言いたいのかが分からずに
それを見下しながら成瀬は一際に厭らしそうな表情を浮かべて顔を近づけた。深い皺を湛えているにも拘らず、その肌は脂肪を過剰に抱えているせいかどこか表面に油を浮かせて、微かに部屋の光を反射する程てかてかと照ってすら見えた。瓜の皮の如くに弧を描いた唇は、興奮しているのか赤味を増していて、その口の狭間から漏れた吐息が、生暖かいままにむわりと漂って
腐った溝川の匂いがする気がする。
思わず
「おい。
振り返って成瀬が呼ぶと、これまでずっと後ろに控えて押し黙っていた男が歩み出た。その表情は、先までしていた能面のようなむっすりとしたものではなく、これからすることに期待を持っているとでも言うような随分の喜色の満ちた顔であった。そうして笑みを浮かべたまま、指の欠けた右手を
「あの
はぁっと白い靄の掛かりそうなほどに熱い吐息を漏らすと、
「まあ、死んじまったんじゃ。仕方ねえやな。ただな。この痛み。この痛みの分だけの恨みは、お前で発散させてもらうからな。」
低くドスの効いた声で凄む
「な、何をするつもりだ……。」
「なに、俺と同じ目に合って貰おうって、それだけだよ。ちょっとばかり俺よりは辛いことにはなるかもしれんが。」
軽く肩を揺らしてくくくっと細かく笑いながら
一歩近寄るごとに床の板が微かに
「くっ……来るな!」
恐怖でやにわに
「ふん。」
そのまま
「いっ……。」
肉を締め付けられる痛みに
そうして
「同じ目にって何をする――。」
そう言いかけたところで、
一瞬、何をするのかと戸惑った
掴まれた指先が、くっと掌の裏側へと向かって、力を籠められるのを感じる。
「やめっ――!」
鈍い音が室内に響いた。
「~~~~~っっっっ!!」
声とも唸りとも判別出来ぬ、獣の如き声が
「んっぐぅぅぅっっ……。」
指に走る激痛に
「ひぐぅっ……。」
「中々に良い音がしたな。」
苦痛に歪む
「おお、おお。ふふふ、良いのお。お主のような、うら若き女の苦痛に歪む顔は見るのは何ともな……なんとも楽しいことよ。くふふふふ。」
「ど外道がっ……。」
痛みに耐え切れず、
人の苦しむ様を見て楽しむような下衆が居ると言うのも話だけでは知っていた。それでも、ここまであからさまな人でなしの
それ故に成瀬と
「良い。良いな。まだそれぐらいの元気がある方が楽しめると言うものよ。おい、
「承知。」
言われて、軽く笑いながら
慌てて
蛇の様に長い
それだけで骨が軋むほどの痛みが走り、
「やっ……。」
それは何とも楽しそうな仕草であった。
再び鈍い音が室内に響く。
「ぐぎゃう!!」
堪えようのない痛みに
どたばたと音を鳴らして、「っっ~~!!」と痛々しい声を漏らすと、
ただ、仮に指先へと触れれば更に痛みを感じるのだと理解して、
がちがちと歯を噛み鳴らし、それでも指先からの痛みが強すぎて、何度も体を暴れ回らせると
「ほほほほほ、良い痛がりっぷりだ。」
そんな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます