125.緊縛の女囚三
「はんっ。それはな。あ奴が
最早、藩主への嫌悪感を隠すこともせず、成瀬は罵る様に「あ奴」などと呼び始めていた。そうして言葉に怒気を含ませながらも、ふっと口元を緩めて可笑しそうに肩を揺らす。
「だからな。先に
ほくそ笑んで成瀬は満足そうに顎を撫でる。
「そして
「それは一体どういう意味ですか……?」
「
言いながら成瀬は大上段から見下ろすかのごとき視線で
「まあ、そういうことで言えば、お主があの女を連れて来てくれたのは、
「では、
「そういうことよな。上手く行くとも思うておらなかったが、存外に思惑通り嵌りおったわ。噂に聞いた
ぎりっと
「それで、どうなったと思う?」
「それでとは?」
もう成瀬に対して丁寧な言葉を使うつもりもなく、
「お主は、
「……どうなったと言うのです?」
「どうなったと思う?」
得意げに問う成瀬の言葉に、
僅かに俯きながら、すぐに顔を上げて成瀬へと向かって、沸き上がった心持をそのままに吠え付ける。
「どうなったもこうなったも!
「ハハハハハ!!」
何が可笑しいのか、成瀬は大仰に笑い声をあげると、柏手を打ちながら体を何度も震わせる。
「お主は本当に
侮りに満ちた成瀬の言葉に、
俯いたのも唇を噛んだのも、成瀬に悲痛な表情を見せたくなかったからだった。どうなったと思うなどと尋ねられた時から、その答えはほぼ半ばに予想はしていた。予想はしていたが、実際に言葉に出されてしまうと、想像以上に辛くて喉奥から言いようも知れない感情が溢れだしそうになってしまう。
いつも
ただ、それ以上に、
出会ってから十日も一緒に居なかっただろうが、何故だか、彼女には親しみのようなものを感じてしまっていた。くすくすと可笑しそうに笑っては、悪戯っぽい口調で
不意と何故だか、
そして、そんな彼女が居なくなったのだと言うことを思い出して、余計に辛くなる。
「
思わず
「さて。」
と、
「もう分かっているとは思うが、お主にも死んでもらわねばならぬ。」
そう言った途端、ぎいっと床板を踏む音を鳴らして成瀬が
思わず
「なに、直ぐには殺してやらんよ。お主をただそのまま始末してしまうのも勿体なくてな。のう?折角に良い顔をしているのだから。」
皺を湛えて水気の少なくなった唇を、分厚い舌で舐めとって僅かに潤わせると成瀬は、けひっと喉の奥から何とも奇妙な笑い声を鳴らす。
成瀬の言葉に、
「そう慌てずとも、そんなことをしようというのではない。その程度のことならお主なんぞに手を出さずともどうにでもなるというものだ。……むしろ、お主としてはそちらの方が良かったと思うかもしれんが。」
「そ……それは、一体どういう……。」
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