123.武家屋敷の惨劇六 - 緊縛の女囚一
「ちょいと、貴方様。」
それは酷く落ち着いた声であった。
「な、なんだ?」
「いえね。一つ聞きたいことがあるのですが、教えていただけませんでしょうか。」
「誰が屋敷に押し込んできた賊なんぞに答えることがあるかっ。」
「そうですか。」
その途端、
途端、酷く鈍い音が響いて屋敷が僅かに揺れた。
「ぐぎゃっ!?」
低く濁った声で、
即座に
「おや、まあ、大丈夫ですか?」
自分で打ちつけておきながら
「ぐ…ぐぐ……。」
「さて、聞きたいことがあるのですがね。」
「だ、誰がっ――。」
「ぐううぅっっ……。」
そのまま
「ぎゃぅっ!ぐっ!ごぶっ!」
柱へとぶつかるたびに
十度ほども叩きつけたころだろうか、ようやく
「聞きたいことが、あるのですが。」
「……。」
それでも口を割らず黙って目をそらした
そうして再び
「答えたくなりましたか?」
「む……。ぐ……。」
「仕方ありませんねえ。」
ぽつりと言って、
「な、なんだっ……!?何が聞きたい?」
「今日の
「女?いや、知らな――。」
答えの終わらぬ間に、
「~~~~っっ!!」
酷く喚いて
「女の居場所を。」
「知っ!!知らない!!知らないんだ!本当に!!」
痛みに耐えきれぬといった悲惨な表情を浮かべて
ただそれが故に
「なんとも。使えませんねえ。」
吐き捨てるように言うた瞬間、
途端と、開いた首から
* * *
二十七
――
「う、うぅ……。」
天地があやふやになるほどの吐き気を覚えながら、虚ろと覚醒の間を行き交う頭の中で、何故だか直ぐに起きなくてはと言う切迫感だけが襲ってきて、
「あうぅ……。」
気が付けば何時の間にか口の中に溢れ返っていた唾液が唇の端から漏れてだらりと垂れた。傍目から見れば何とも見苦しい有様にも
視界が歪むのと、どことなく周囲が薄暗いために、はっきりとは見えなかったが、それは穴の一つもなく板目も違わずに揃えられた綺麗な並びの板張りで、少なくとも前に見た
更に
そう理解してみると、確かに耳を
次第と、どうやら
そうして、更に正面へと目を移ろわせてみると、目の前に人影が立っているのに気が付いた。
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