116.嘆願三 - 滴る血一
その刹那、
「
悲鳴のように上げかけた言葉を口に出し切る前に、
「あっ……。」
ぐわんと頭の中が強く揺れて、
* * *
二十五
ぴちょっ――
と、頬に冷たいものが当たる感触を覚えて、
「く……うっ……。」
微かに喉から
「あ……?なにが……。」
自分の頭がどうして痛むのかが分からずに顔を
途端、再び頬へと冷たいものが落ちた。
「んぅっ……?」
その冷たさに思わず右手で軽く頬を拭うと、指先には一塊の水滴が
顔に振りかかった木の葉の滴を拭いながら、妙に
空からは、さあさあと
「ああ……そう言えばそうでございましたね……。」
小さく呟いて、頭の痛みと共に溜息を吐き
この崖を飛び降りたのだと、ようやく
改めて
立ち上がろうと地面に手を立てて力を籠めた瞬間、ぴしっと関節に痛むものを感じて
「つぅっ……。」
小さな声を上げて目を細めつつ、慌てて
何度か左手をぐっと握り締めてみながら、
それもこれも、この男の
それは一緒に崖に落ちた男、
結局の所、
それでも未だ生きているのか、
呆れかえるような生命力であった。
「いやはや、何ともまあ頑丈なことで。」
溜息をつきながら、
こうしておけば、少なくとも森の中で俯せているよりは、仲間から見つけ出して貰いやすくなるだろうと言う、多少の心遣いであった。
刃先を切り交わらせた間柄ではあったが、なんともなしに
「街に連れていくなんてことは出来かねますからね。これぐらいで勘弁してください。あの局長さんでしたら、貴方のことも探しに来るでしょうし……。」
ただ、それが故に、
立ち上がると、さっさと立ち去ろうと足を踏み出したところで、ふと思い出したように
「ああ、そうでした。最後に一つだけ。」
言いながら
「急に気を取り戻して、後ろから襲い掛かられたら困りますからね。これはいただいておきますよ。」
聞こえてもいないだろう
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