113.驟雨の乱闘五
「っ……!」
忌々し気に舌打ちを鳴らした
「鈍いなっ。」
刀の切っ先を地面に擦りつけるように低く滑らせて一気に近づいてきた
「しぃっ……!」
咄嗟に
引いた後ろ脚を踏み込ませて体勢を立て直すと、そのまま、刀を振り切って態勢を崩した
その瞬間、
途端、鼻筋の直ぐ手前を、刀の切っ先が文字通り真一文字に空を斬って通りぬけていった。
「ひぅっ……。」
思わず、
切っ先が顔先をすり抜けると、追うようにして風を切る音が鳴り、そうして僅かに
「ぐっ。」
思わず
「
慌てて
「ちぃぃぃぃっっ!!」
僅かに
転んだ拍子、
陣伍に刺された傷は深く、そして動くたびにその傷を広げて、少しずつながら確実に
片手で右の脇腹を抑えながら、慌てて立ち上がると、
浅く息を切らしつつも、腹の傷口から手を離して改めて
迫り来ている二人から少しだけ視線を外して、周りへと目をやってみると、周りの隊員は刀こそ構えているものの、こちらへと手を出してくる様子はなく、むしろ周囲に大きく広がっていっているように見えた。恐らくは
先ほどの寺で
「おい、よそ見してんなよ。」
そんな風に周囲に意識をやっているのを目ざとく見咎めたのか、すぐに
「覚悟!」
「ちっっ!」
慌てて
刀を構えたまま
ざりっと地面の上を滑らした足の一部が、僅かに宙へと浮いているような感触に、微かに
それで思わず足を止めると、
「もうこれで逃げられねえぞ。」
慎重に、目を切らさぬよう
「私は逃げていたつもりなどないのですがねえ。」
追い詰められたように見えながら、それでもくくっと軽く笑って
「ええ、そうですとも。」
ふっと
そうして、にじりと
眼前で、切っ先が跳ね上がり、そのまま
二人は刀の
ギリギリと
「もう、諦めろ。てめえにはもう、打つ手はないだろ。」
柄を握る手に万力を籠めて全身を震わせながら、
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