112.驟雨の乱闘四
「
どこか泣きそうな表情で言う
「
「だって、ここで斬り合ったって
「大人しく捕まったって、どうせ死ぬだけでしょう?」
「そんなことは……。」
言葉に詰まって
「局長、もうこうなっちまったら、どうしようもねえよ。」
溜息を一つ払いながら、
「局長はお下がりください。」
「ですが、
どこかせがむ様に
「お諦めください。相手が刀を抜いている以上、
口調だけは
「分かりました。死なせてしまっても仕方ありません……が、でも、なるべく取り押さえてください。何か事情があるかもしれませんから、それを聴いておきたいです。」
「そりゃなんとも。無茶を言う。」
苦笑いをしながら、それでもどこか嬉しそうに言って
「こういう、お優しいところが局長の良いところです。」
糸のような細い目を一層に細ませて顔を笑ませる
二人に応じるようにして、周囲にいた隊員たちも
ぽつぽつっと降り始めていた雨が、隊士達の刀身へとぶつかるや、小さな滴が白い波紋の上に細やかな粒となって纏わりついていく。そうして、次第と降り注ぐ雨粒は勢いを増して本格的なものへと変わりゆき、その曇天の下にいる者たちの肩をしっとりと濡らし始めていた。
遠く山の間際に漂う雲の狭間に瞬きの如くに閃光が走ったかと思うと、僅かばかり間をおいて雷鳴がと轟いた。周囲一帯は土砂降りの雨模様へと移ろい行く間際にあった。
* * *
唐突に現れた
「なんで……そんな……わざわざ
彼らが何を話したのかは
「怪我してるっていうのに……。」
遠目ではあったが、
そう思った途端、
本来なら、
物心の付いた時から、命じられることをこなして生きて来ただけの
勢い良く降りだした雨の水気を吸って、ぐずぐずになった
そう考えて、
* * *
徐々に、
指先の細かな感覚が薄れていき、全身が妙に気怠く、呼吸をするのもどこか億劫にすら感じられてしまう。それは腹部に負った傷から血が流れ出てしまっているのが原因なのか、それとも勢いを増して体に打ちつけてくる雨に体温を奪われているのが原因なのか。恐らくはその両方共だろうと感じながら、
握りしめていた刀の先が何故だか次第と重く感じられ、どこか指が滑るような気がして
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