111.驟雨の乱闘三
「なんで、てめえがそんなことを知ってやがる……。」
「やはりそうですか。」
恐らく、と言うよりは先ず間違いなく、
なぜ成瀬の
察するに、今起きている事の次第は、この寺に来る前から仕組まれていたのだろう。
たしか、藩の転覆を狙っているだとかなんとか言うていた。
仮にそんな陰謀を本当に企んでいたのならば、証拠を全て消すために、殺しを依頼した相手まで消そうとすることぐらいはやるであろう。
刹那、
その身をゆるりと傾けたかと思うと、途端、全身の毛が逆立つほどに殺気を溢れさせ、その勢いで周囲の
「ひぃっ……。」
居並ぶ
それを
何を情けない声を、と言いたい気持ちはあったが、そんな悲鳴を上げる気持ちも分からないではなかった。そう感じるほどに、目の前の女は異様で
ただ、次の瞬間、不意と、
「あのご老人、本当に食えませんねえ……。」
そう言って、先の一瞬からは想像も出来ないほどの、なんとも気の抜けた雰囲気で
その大仰な溜息に
「疲れているところ悪いが。大人しく
「私を取り調べでもしようっていうんですか?」
「何を。これだけ人を斬ってるんだ、調べるだけで済むと思うか?殺しの下手人としてここで斬り殺されたって、てめえは文句も言えねえ状況だ。」
周囲に転がる死体を見渡しながら、
「そりゃあ、まあ、そうですがねえ。」
そして、
こんな回りくどいことをして、
「どうした?さっきからそっちを見てるが、誰かいるのか?」
「貴方様がたには関係のないことですよ。」
言葉の最後で
今こうやって
行くしかない――
「先ほどの問いですがね。貴方様がたの
「来るのか?」
「折角の色男様のお誘いですからねえ、お受けしたい気持ちはありますが……ですが、私がどう応えるか等と、貴方様も分かっているでしょう?」
「さあな。他人の気持ちなんざ分からんし。てめえのことは特に分からん。」
「そうですか。じゃあ、言っておきますがね私は行きやしませんよ。このまま帰らせていただきます。」
どこかさぱりとした口調で言った
「
途端、
更に、もう一歩足を踏み出そうとした
それでも
「ふ、
僅かに言い淀んだ
「折角のお引き留めですがね。旅の連れが心配でして、私には貴方様がたのご用件に
未練もなくさぱりと言いきると、
その手応えには何も引っかかるものがなく、先ほどまでさんざ斬りつくして血と脂に塗れていたとは感じさせない綺麗な音色であった。
刀身も歪まず、切れ味も保っているだろう、その感触に
「あの、
「局長。」
僅かに戸惑ったように
「こんな状況で刀を抜くな、なんて言わねえよな?」
「それは……。」
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