107.曇天の闘諍五
他の男達を餌として使い、
言ってしまえばここからは未知との闘いであり、勝てるという確証が揺らいだ気がして、刹那、
だが、それでもまだ――
と、
彼女の服の一部は腹から裂かれ、そこから赤い
目の前の敵は手負いであり自分の方が優勢であるはず。そう思いなおして
そうして改めて左で構える相手の立ち姿を見て、その違和感に
兎も角も、これからは得体のしれぬ太刀筋との斬り合いであり、
そんな
すうっと
それは右で構えていた時と、
今までの人生で体感したことの無い、逆側からの剣筋に、なまじっか目が良いが故に、
一瞬、刀を合わせようかとも考えたが、逆側からの剣筋にかち合えば、力が籠められずに弾き飛ばされてしまうのではと思えて、ただひたすらに
しかし、と、
必ず目が慣れるはずであると。
それは自身への信頼であり、その目の良さでこそ生き抜いてきた経験から来る自信と言うべきものであった。
ざりっと彼女の足が地面を引っ掻いた音が耳に響く。
不意と、
その刹那に、
それは
二つの刀の刃先が反射した光が弧を描いて空を斬る。
果たして、と
ギィィィッ――
刀身全体が打ち震え、うなりのある鈍い音が響き、共振してどこか割れるような音色へと変わっていく。
その瞬間、
「ははっ、勝った!」
弾け飛んだ刀を見上げて、思わずも
そのはずであった。
少なくとも、刀を失った相手に負けようはずもない。
しかし、ふっと
目の前で、武器を失ったはずの女は、むしろ笑みを湛えて、何とも嬉しそうに口角を上げていた。
死を前にして狂ったか――
瞬時に、
何よりも刀を弾かれたにもかかわらず、笑みを浮かべるなどと理解も出来ず、不意と
そう、
そうして、その
そこには、先ほど収めた
にまりと一層に
「しまっ……!」
彼女の動きを察した瞬間、
自らは刀を弾き飛ばすために万力を籠めて刀を振り切っていた。しかし相手は既に次の攻撃へと動き始めていた。
即座に飛び退こうと、
それを察していたかのごとくに、
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