105.曇天の闘諍三
「おぅ!?」
刃の先端が地面へとめり込んで、ガザりと微かな金属の擦れる音を響かせると、そこで刀身の動きが止まった。
「なっ……くそがっ!!」
その動きの止まった、斬り合いの中の間隙と言うべき機を
綺麗に半月状の軌道を
「ぐふぅ!?」
想像だにしていなかった蹴りで頭を揺らされたことによって、
回し蹴りを食らわせた張本人である
そんな彼女の一挙一動を眺め、即座に襲い掛かってこないことを確かめた
どうやら蹴られた時に頬の肉が歯にぶつかって裂けたらしい。口の中に痛みを感じながらも
「普通、あの状況で蹴りに来るか?足癖の悪い奴だな。」
「みなさん、ああいう状況ですと刀ばかりに目を奪われますからねえ。斬るよりも、蹴ったり殴ったりの方が、当たることが多いんですよ。」
楽しそうに
「蹴られた俺が言うのも何だが、性根が悪いな。」
吐き捨てるように言った
「でしょう?」
と笑みを浮かべて言っていた。
そうして、嬉しそうにしたままに、構えた刀の切っ先を左右へと揺らしたかと思うと、今度は
右下段に構えていた切っ先を、
その剣筋もまた、
数度にわたって刀を交わし、幾度も剣を振るが、その
どうにもそれは、あたかもそう狙って防がれているようであり、
「不思議かい?」
刀を打ち合わせつつも、
「何を……。」
僅かに
「不思議だろう?振るう剣が全くをもって防がれて。不思議じゃないかい?」
「貴方がお強いからでしょう。」
「そうだがね。」
ふんっと
「それだけじゃないさ。あんたの剣筋は、さっきまでで随分と見させてもらったからね。あんたの癖みたいなものは見慣れたもんだよ。」
その言葉に
そしてそれは確かに
「そうでございますかっ。」
苦々しく言葉を吐き捨てながらも、気が付けば、
左足側から
「しぃっ――。」
たじろぎながらも、
その瞬間。
不意と、
足先に触れた奇妙な感触に、さっと視線を向けると、
「しまっ……!」
僅かに声を上げた時には遅かった。踏み下ろそうとした動きは止められず、
そして、それをまるで見計らっていたかのように、
真っすぐに、
「ちっっ!」
瞬時に
迫りくる刀の背に、
ただ、下方へ滑りながらも
ぎいいっとどこか擦れるような音がした。それは
「っくぅぅっっ!!」
ずるっと、腹部から刀の切っ先が抜けて、赤い粘り気をもった液体が腹部と切っ先とで糸を引かせて、ついっと
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