104.曇天の闘諍二
もうあと一歩で互いの刀が届く。
そんな距離まで近づいて、二人は互いの視線を交わさせると自らの持つ
その妙さが何か面白かったのか、
数度肩を揺らした直後、途端に、何の予備動作も見せずに陣伍は足を駆った。
思い切りに足先で地面を蹴り飛ばし、瞬く間に
「っ!」
それは
ふっと息を斬るや
「しぃっ――!」
罵るかのごとくに小さく声を漏らした
肌を
今度は
鋭く風を切る音がして、刀が鋭く真一文字に滑るのを、
刀の先が空を斬ってひゅうっと鳴るような音がするのを感じながらも、
ふと、
親指の先についた血へと舌を伸ばし、ぺろっと舐めとってその鉄臭さを味わいながら、
「噂に
敵を褒めそやかす
「何を……俺の折角の
そう言って
彼の着る羽織は左脇から左の肩口へと向かって、一直線に切れ目が入り、その布地が垂れて
それは先の
「これも、あんたが疲れてなけりゃ。もう少し深く切っ先が入って体も斬られていたんだろうがなあ。」
垂れた布の端っこを指先で摘まんで、ひらひらと捲って見せながら軽い調子で
「さあて、どうでしょうね。元より私の技量など、その程度かもしれませんよ。」
一つ
一方で陣伍は眉根を持ち上げて、どこかお
「そういうことにしとけよ。折角、十何人も死なせたんだから、そうでなきゃ死んだ奴らの立つ瀬がなかろう。」
「貴方様は、そんなこと気にする性分でありましたか?」
「いいや。相手するんだから、せめて疲れてて欲しいってだけさ。」
軽く言って
それに応じて
そう言えば、今頃
「こんなときに何を私は……。」
相手の言う通りに疲れているのだろうか、今まで斬り合いをしてきた中で、そんなことを考えることなど一切もなかったのに、頭の片隅に
そんな
そうして足を駆らせ、今度も
「はっ――。」
僅かばかりに集中のしきれていなかった
「ちぃ、斬れんかっ。」
勢い刀身が跳ねたの感じて、
その瞬間には、
「あ、くそっ!あぶねえな!」
余裕があるのか妙な
「くぅっ……。」
逆にその切っ先の鋭さに
するりと体の
その瞬間を機と捉え、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます